ユニークなバラの野生種~『趣味の園芸』5月号こぼれ話<前編>
ウェブサイト「みんなの趣味の園芸」だけで読める連載「テキストこぼれ話」。『趣味の園芸』テキストの特集内容に関連して、誌面で紹介しきれなかった情報をお届けします。
5月号「そもそもバラってどんな植物?」で、植物としてのバラの特徴や歴史、そして年間の栽培サイクルを教えてくれた上田善弘さん。上田さんはバラの遺伝資源探索のため世界のバラの自生地を調査してきた研究者です。
そんな上田さんに、世界の変わったバラ、特徴的なバラを紹介してもらいました!
唯一の単葉のバラ、ロサ・ペルシカ
バラの葉は、5月号58ページでも紹介しているように、小葉とよばれる小さな葉が3枚、5枚、7枚などの奇数で構成された「複葉(奇数羽状複葉)」とよばれる形状です。複葉は、もともと1枚の葉だったものが分かれてこのような形になったものと考えられています。バラの中で唯一複葉ではなく単葉なのが、野生種のロサ・ペルシカです。イランから中央アジアの乾燥した地域に自生するこのバラは、単葉のほかにも、花の中央に底紅と呼ばれる模様があるなど、特異な性質を持ちます。
イランの自生地で撮影されたロサ・ペルシカ(撮影:上田善弘)
ユニークなトゲをもつバラ
一部とげのないバラもありますが、西洋のことわざにも「バラの花にはとげがある(とげのないバラはない"No rose without a thorn.")」と言われるように、バラの大きな特徴のひとつはとげです。同じくとげが特徴のサボテンのとげは葉が変化したものですが、バラのとげは樹皮が変化したものです。細かいとげ、鉤状のとげなど、形状はさまざまですが、特に目立つとげを持つバラが、中国四川省峨眉山(がびさん)に自生するロサ・オメイエンシス・プテラカンサです。伸びだしたばかりの枝に大きく赤く美しい三角形のとげがついた姿は、とてもインパクトがあります。
ロサ・オメイエンシス・プテラカンサの赤く大きなとげ(撮影:上田善弘)
後編に続きます。
後編では、巨大な樹木状のバラ「シャングリラ・ローズ」を紹介します!
撮影:玉置一裕
上田善弘(うえだ・よしひろ)
40年にわたりバラの調査研究を続けている。千葉大学園芸学部助教授、岐阜県立国際園芸アカデミー学長を経て、花フェスタ記念公園理事。現在も四季咲きバラのルーツを探るために中国を訪れ調査中。バラのコンクールの審査委員長も数多く務め、『別冊趣味の園芸 バラ大図鑑』(NHK出版)の監修も務めた。
「テキストこぼれ話」では、『趣味の園芸』テキストの特集に関連して、担当編集者による講師へのインタビューなどをウェブ限定で公開しています(毎月2回更新予定)
『趣味の園芸』2021年5月号(4/21発売)
バラは誰もが見たことがある花です。でも、どんな特徴や性質があるか、育てるにはどんなお世話をするのか、知らないことも多いのでは? 上田さんが、初めの一歩からお伝えします。