ラズベリーのあれこれを今西先生に聞いてみた!<前編・ラズベリーの魅力は? 流通事情は?>『趣味の園芸』7月号こぼれ話
ウェブサイト「みんなの趣味の園芸」だけで読める連載「テキストこぼれ話」。『趣味の園芸』テキストの特集内容に関連して、誌面で紹介しきれなかった情報をお届けします。
今回は、7月号のベリー特集で「初心者イチオシの人気のベリー ラズベリー&ブラックベリー」を教えてくれた今西弘幸さんが登場。秋田県立大学で教鞭をとる傍ら、地域と一体になってラズベリー、ブラックベリーの産地化に努める今西さんに、味わいの魅力やラズベリーの現状などを伺います。
* * *
編集部(以下、編):日本はもちろん海外でも、ラズベリー研究者として知られる今西先生。そんな今西先生が、そもそもラズベリーにハマったきっかけは何だったのですか?
今西先生(以下、今):ラズベリーとの出会いは、大学生のころ、学内の果樹園に植えられていたラズベリーの果実を食べたときです。当時はベリー類の一種であるハスカップを研究材料に使っていたのですが、職員の方に許可をもらいラズベリーを食べて、「おもしろい果実があるなぁ」と思いました。就職してから研究課題を考えているときに、学生のときに食べたラズベリーを思い出し、いろいろと調べていくうちに、研究材料として取り組んだらおもしろいことができそうだと分かり、この道を進むことになりました。
ラズベリーの仲間。(撮影/田中雅也)
編:ラズベリー、そういえばあまり生では味わったことがないかもしれません。先生の思う、ラズベリーのおいしさはどんなところですか?
今:まずは甘酸っぱい味わいですが、魅力の一つは特有の芳香だと思います。生の完熟果実を食べるとラズベリーの甘い香りが口の中だけでなく鼻に抜けるほど広がって、幸福感に包まれますね。冷凍果実をそのまま頬張るのもおいしいですよ。また、ラズベリーは加工されていることが多いと思いますが、ラズベリーのムースやラズベリーがブレンドされたフルーツソースを使ったケーキも大好きです。
海外では、コンビニやスーパーマーケットで売られているボトル入りのスムージー、個包装のラズベリーヨーグルトがおいしいですし、ラズベリー、イチゴ、チェリーなどの赤い果実のドライフルーツの入ったシリアルを、海外赴任時は朝食によく食べていました。
英国の自動車道のサービスエリアで売られている、ラズベリーのスムージー。(写真提供/今西弘幸)
ポルトガルのスーパーに並ぶ生鮮のベリー類。(写真提供/今西弘幸)
編:そういえば、スーパーマーケットなどでは、冷凍果実のコーナーでは見かけますが、生の果物売り場では見ない気がします。国内に生の果実は流通しているのでしょうか?
今:業務用には流通していますが、一般の消費者向けには少なく、都内の高級?スーパーくらいでしか見ることがないようです。ですが、コス〇コなどでは普通に売られるようになってきたり、一時期は私のいる秋田県でもイ〇ンが扱っていたりと、以前よりは目にする機会がふえましたね。
いずれも輸入の生鮮果実で、国内で流通するラズベリーはほとんどを輸入に頼っているのです。一年間で生の果実が約500トン輸入されるのに対し、冷凍は約3000トンと約6倍ですから、大半が冷凍になりますね。
一方で、国産はラズベリーとブラックベリーがそれぞれ10トン程度の計20トンほどの出荷量となっています。今後は、国産のラズベリー・ブラックベリーの生産量が増加して、より親しみのある果実になることを期待しています。
編:国産のラズベリーをふやすために、今西先生も活動をなさっているんですよね。そちらは後編でお伺いします!
後編は、「国産ラズベリーをふやす取り組み」についてお伝えします!
今西弘幸(いまにし・ひろゆき)
秋田県立大学アグリイノベーション教育研究センター准教授。ベリー類、とくにラズベリーの研究に長年取り組むスペシャリスト。地域の生産者や菓子店、役場と協力してベリー類の生産振興に取り組み、身近な果実になることを願っている。
「テキストこぼれ話」では、『趣味の園芸』テキストの特集に関連して、担当編集者による講師へのインタビューなどをウェブ限定で公開しています(毎月2回更新予定)
『趣味の園芸』2021年7月号(6/21発売)
ラズベリーとブラックベリーは、苗木1本から始めて、品種によっては1年以内に収穫が楽しめる手軽さが大きな魅力です。基礎知識やおすすめ品種、育て方などを今西さんが教えてくれました。