多岐にわたる造形の美しさと生命力......再評価されるアロエ
数多くの園芸家たちを惹きつけてやまない多肉植物の世界。身近な多肉の1つであるアロエが、育てがいのある多肉植物として趣味家たちに愛され、再評価されています。園芸家の佐野 馨(さの・かおる)さんが、アロエの魅力を語ってくれました。
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顧みられずとも美しくたくましい植物と生きる
「新しくてピカピカしたものより、忘れ去られてしまったような、主流から外れているようなものが好きなのです」という佐野さん。愛を注ぐアロエのなかには、放置されていたものをもらってきて育てている鉢も多いそうです。
「ノギのガラスのような質感と、葉がもつみずみずしさとのギャップがたまらない」と微細な部分を楽しむ一方で、ワイルドに大きく育つようなところにも惹かれ、その姿を見に自生地に何度も足を運んでいるそうです。
「厳しい環境の中で紅葉したアロエが、荒野に燃え広がる野火のように群生している......。その美しい光景は忘れられません」
自生地で得られるのは感動だけではなく、どんな環境で育っているのかが肌でわかり、その知見が栽培にも生かされているといいます。
最近では、美大生時代に専攻していた油絵に再び取り組み、多肉植物をモチーフにした作品を描くようになったそうです。
「海洋生物のようななまめかしさのある株姿を眺めているだけで、いろいろなアイデアが湧き出してきました」
佐野さんにとってアロエは、ライフスタイルの形成にも深く根を下ろし続ける、そんな植物なのかもしれません。
テキスト『趣味の園芸』2021年10月号「さあ、多肉ワールドへ 第7回 アロエ」より