コウム通! 荻原範雄さんに聞く。<前編・シクラメン・コウムの楽しみ方>趣味の園芸12月号こぼれ話
ウェブサイト「みんなの趣味の園芸」だけで読める連載「テキストこぼれ話」。『趣味の園芸』テキストの特集内容に関連して、誌面で紹介しきれなかった情報をお届けします。
今回は、12月号シクラメン特集「手軽でかわいい推し原種 はじまりはコウムから」で、シクラメン・コウムについて教えてくれた荻原範雄さんが登場。人気連載「おぎはら植物園のナチュラルガーデン」でもおなじみです。
自身が営む園芸店でもシクラメンの原種を各種取り扱い、その知識も豊富な荻原さんが<コウムの楽しみ方>について教えてくれます。
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編集部(以下、編) 荻原さんのお話を伺うまで、原種シクラメンはお値段も高く、栽培も難しいという印象を持っていました。
荻原範雄(以下、荻) 今回紹介したコウムは、原種シクラメンの中でもヘデリフォリウムと並んで強健で、初心者の方にも育てやすい花。そして最近は流通量も増えているため、手ごろな価格で手に入れることができるんですよ。
早春の庭を彩るシクラメン・コウム。模様も美しいリーフは秋から春にかけて半年以上楽しめる。(撮影/荻原範雄)
編 花の可憐な印象とは裏腹に、丈夫なんですね。
荻 極寒冷地を除き庭でそのまま越冬することができ、園芸種のシクラメンなどよりずっと丈夫といえます。園芸種のシクラメンのように、肥料によって花期が長くなるわけでもないので、どうしてもあげたいということでなければ、肥料の必要もありません。
編 なるほど。ほんとうに手間いらずなんですね。ちなみに、荻原さんはコウムをどんなふうに庭に植えていますか?
荻 スノードロップなどの小球根やクリスマスローズ、フクジュソウなど、早春の花と一緒に咲かせていますね。
編 庭に植えるとき、何かコツはあるのでしょうか?
荻 コウムはポット苗として流通しているときが、すでに生育のピーク。植えつけた年は、あまり大きくなりません。なので、周囲の植物に覆い隠されないように間隔を開けて植え込みます。また、植え込む際は深植えにならないように注意してください。
ポット苗の状態で販売されるコウム。(撮影/荻原範雄)
編 球根のほかにも、相性のいい植物はあるのでしょうか?
荻 寄せ植えにするなら、カルーナ、小さなハボタン、チェッカーベリーなどが、おすすめです。季節も性質も合っていると思います。庭に植えるときは、根を張ってどんどん大きくなるような一年草と植えると、覆い隠されてしまうので気をつけましょう。コウムと同様、あまりサイズが変わらない植物を選ぶのがおすすめです。
ピンク、紫、白色などの花を咲かせる、樹高20~80cmの低木カルーナ。(撮影/伊藤善規)
花のような華やかさが楽しめるミニハボタン。(撮影/田中雅也)
編 では、多肉植物などもよさそうですね。
荻 いや、コウムはある程度の湿り気を好むので、乾燥を好む多肉植物とはじつは相性がよくないんです。
編 なるほど、似た性質をもち、似た環境を好む植物同士で植えることが大切なんですね。
後編は、荻原さんおすすめの原種シクラメンを紹介します!
荻原載雄(おぎはら・のりお)
長野県上田市で宿根草と山野草を扱う植物専門店を営み、全国の園芸ファンから支持されている。シクラメン・コウムはシーズンに先駆け初秋から店頭にそろえ、たちまち売り切れるほど人気。趣味の園芸テキスト2021年4月号より「おぎはら植物園のナチュルガーデン」連載中。
「テキストこぼれ話」では、『趣味の園芸』テキストの特集に関連して、担当編集者による講師へのインタビューなどをウェブ限定で公開しています(毎月2回更新予定)
『趣味の園芸』2021年12月号(11/20発売)
「育てるのが難しそう!」「希少で手が届かないのでは?」シクラメンの原種にそんなイメージをおもちの方もいるかも。それは、大きな誤解です。【手軽でかわいい推し原種 はじまりはコウムから(p.48~)】では、荻原さんがコウムの魅力と育て方をやさしく教えてくれます。