<名花「パステリッシュストレイン」誕生秘話>大和園・佐藤尚史さんに、あの人気クリスマスローズの秘密を聞きました!【趣味の園芸2月号こぼれ話・後編】
ウェブサイト「みんなの趣味の園芸」だけで読める連載「テキストこぼれ話」。『趣味の園芸』テキストの特集内容に関連して、誌面で紹介しきれなかった情報をお届けします。
今回は、2月号特集内の「クリスマスローズ図鑑」の撮影にご協力いただいた、大和園の佐藤尚史さんが登場。クリスマスローズ愛好家の方は、佐藤さんの作出した「パステリッシュストレイン」「フレックルキス」といった名シリーズをご存じかもしれません。
前編と同様、大和園さん作出のクリスマスローズをご紹介いただくほか、人気シリーズ「パステリッシュストレイン」の誕生秘話をお聞きしていきます。
* * *
編集部(以下、編):早速ですが、大和園さんのクリスマスローズをまだまだ見たいです!
大和園・佐藤尚史(以下、佐):それでは、今回も3株ご紹介しますね。
まずはパステリッシュストレイン*。やさしい色合いで、デュメトルムを使用した小輪多花性の花です。ステムがスッと伸びやすいのも特徴で切り花などでも使いやすいタイプです。
*パステリッシュストレイン…大和園で作出されたクリスマスローズのシリーズの一つ。白地の花にえんじ色~ピンク色のパステル模様が入る。
次はここ数年力を入れて交配に取り組んでいるエッジにフリルがかかる花です。ダブルとセミダブルのタイプがあるのですが、こちらはホワイトのセミダブル。内側の花弁が黄色になることが多いため立体感もあり、優しい印象の花になります。
最後は蕾と花のバランスがかわいい、ダブルピンクピコティーです。ほう葉(蕾を包むために葉が変形した部分)が大きくならないため、飾りやすい花です。
編:ありがとうございます! 大和園さんのやわらかなクリスマスローズを象徴するのが、ご紹介いただいたなかにもある「パステリッシュストレイン」だと思います。どのように作出されたのでしょうか。
佐:クリスマスローズの花の画像を解析していて、グレーのシングルの花のなかに、模様を見つけたのが始まりです。その模様を白い花に出したのが「パステリッシュストレイン」なんです。
編:画像を解析……とは?
佐:もともとインターネットが好きで、技術的なこともいろいろやっていたんですよね。プログラミング、デザイン、企業のHP制作などなど……。そのあたりの経験をたまたま生かすことができました。
編:大和園を手伝う前に、ということですか。誌面にも書かせていただきましたが、はじめからクリスマスローズに特別な興味があったわけではないんですよね。
佐:そうですね。クリスマスローズも、雪が多くて温度の低いなかでも育つ植物のなかの一つ、というくらいの認識で、当初は「地味な花だなあ」と思っていました。でもナーセリーを手伝うことになり交配のことを知るにつれ、「花って自分で作れるんだ」という見方になって、俄然おもしろくなりました。そこからのめり込んで、今に至ります。クリスマスローズ人気は2010年ごろにピークが来たかなと感じましたが、そこから衰えていないですよね。言語化できない美しさがあると思います。年に1回だけ、花の少ない時期に咲くというのもいいですよね。
編:いまはどんなことに注力されているんでしょうか。
佐:クリスマスローズ以外では、シュウメイギクに注目しています。風に強くて、揺れてかわいい花ですね。
編:次回はぜひ、シュウメイギクの魅力も詳しくお聞きしたいと思います!
(写真撮影はすべて桜野良充)
<終わり>
前編はこちら!
佐藤 尚史(さとう・ひさし)
岐阜県郡上市のナーセリー・大和園の2代目。2001年より家業を手伝う形でクリスマスローズの育種を開始。「パステリッシュストレイン」「フレックルキス」などのシリーズをはじめとした、佐藤さん作出のクリスマスローズは、その飽きのこない美しさで業界の新たなスタンダードに。
「テキストこぼれ話」では、『趣味の園芸』テキストの特集に関連して、担当編集者による講師へのインタビューなどをウェブ限定で公開しています(毎月2回更新予定)
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2月号の「クリスマスローズ図鑑」には、大和園のクリスマスローズがたくさん登場!「みんなの趣味の園芸」でもおなじみの野々口稔さんが、今年注目したい "やわらかシンプル" なクリスマスローズを紹介してくれました。