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レジェンド小林 浩さん、いま語る多肉愛~『NHK出版 決定版 多肉植物図鑑』刊行記念インタビュー

レジェンド小林 浩さん、いま語る多肉愛~『NHK出版 決定版 多肉植物図鑑』刊行記念インタビュー
『NHK出版 決定版 多肉植物図鑑』刊行記念インタビュー

世界中の原種、園芸品種、約1620種を収載した『NHK出版 決定版 多肉植物図鑑』が、1月19日に発売されました。

監修をつとめた小林 浩(こばやし・ひろし)さんは、知る人ぞ知る多肉植物界のレジェンド。

本の出版を記念して、小林さんにインタビュー! 多肉植物の魅力や、ご自身の多肉遍歴など、貴重なお話しを伺いました。

 

* * *

 

造形美に惚れ込んで

 

多肉植物が好きなら、その人の名前を耳にしたことがあるかもしれません。

趣味で多肉植物と寝食を共にするようになって70年の小林 浩さん。84歳になる現在も多肉植物の展示即売会などを主催し、現役バリバリで活躍していらっしゃいます。 

そんな小林さんに、多肉植物の何がそれほど魅力的なのか質問したところ、開口一番「なんといっても造形美」ときっぱり。

「まるまるとした玉型メセン、石のかけらを組み立てたような形の牡丹(ぼたん)類、透明な窓のあるハオルチアなど、独特な姿のおもしろさがほかの植物にはない魅力です」「近年はパキポディウムやアデニアなどの壺形の塊茎(かいけい)がおもしろいという人が大勢いて、人気がありますね。昔に比べると格段に種類がふえてきたのも楽しい点です」

 

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ユーフォルビア・ホリダなどが勢ぞろいした小林さんの温室の一角。

 

数えきれないほどダメにした

 

意外にも初めて育てたのはサボテンで、中学生のときにお母様にねだって買ってもらったものだそうです。

「そのサボテンはとげが柔らかくて痛くない種類でした。当時は多肉植物が今ほど普及しておらず、流通のメインはサボテンだったんです。しかも、サボテンを趣味とする人たちから多肉植物は下に見られていました。なかには『ただの葉っぱだろ?』なんて悪口をいう人もいて。でも、僕は多肉植物に惹かれたんです」

あっという間にコレクションがふえて、冬越し用の温室代わりに90cm四方の栽培フレームを自作したこともあったとか。

「今と違って、売られている植物の栽培情報がどこにもなくて。フレームもつくったけど、当時、東京のこのあたりは今よりずっと寒くてね。氷点下10℃になる日もあったから、ずいぶんダメにしました。試行錯誤の連続ですよ」

授業料が高くつきましたね、と返すと「結局ね、自分で育てて観察しなければ本当のことはわからないんです。本にどう書いてあっても、そのとおりにならないことがいくらでもありますから。数えきれないほどダメにしたけど、ダメにしながらその失敗を次に生かすわけです」。失敗が続くとくじけそうなところ、小林さんはさらにのめり込んでいったそうです。

 

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自宅の庭にある温室。日本国内ではほとんど見られない希少種や大きな株などが並ぶ多肉天国。小林さんが抱えているのは推定樹齢1000年以上というケラリア・ピグマエアの古株。

 

多肉植物を個人で輸入

 

大学を卒業してからは、国内で入手が難しい種類を海外から買いつけることに挑戦。若いころは「給料をそっくりそのまま注ぎ込んで」当時ほとんど日本国内で流通していなかった種類を大量に個人輸入しました。

まだ固定相場制で1ドル360円の時代、決して安い買い物ではありません。しかもインターネットなど影も形もありません。辞書を片手に海外のナーセリーにせっせと手紙を書いたり、愛好家団体の会報に購入希望の広告を出したり。

「英語が得意だったわけではないけど、必死に手紙を書きました」。手紙だけでなく、面倒な輸入手続きの手間もいとわず「好き」の一念でこなしたのだとか。

輸入した植物を同好の仲間が買ってくれたことで次につながる資金ができ、会社勤めの傍ら輸入を拡大。そんなふうに趣味の輪を広げて多肉植物の普及にいそしんだ小林さん。当時を振り返りこんなエピソードも聞かせてくれました。

「勤め先はおうような会社でしたね。仕事の空き時間に手紙を書いたり、会社の倉庫を荷物の届け先にして、そこで荷解きをしたり。みんな感づいていたはずですが特に注意もされません。38歳で初めて自生地を巡る旅に出かけたときには、2週間も休みを取りました」

 

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多肉植物のことになると話が尽きない小林さん。「最近は中国、韓国、台湾などでファンの層が厚くなり品種改良も進んでいます。今後が楽しみです」。

 

毎年2~3回の海外多肉旅行

 

初の海外訪問から44年間。コロナ禍により世界中で移動が制限されるようになる2019年まで、毎年必ず2~3回、海外に出かけていたそうです。

自生地ではアメリカ南西部とメキシコに15回、スペインのカナリア諸島は3回、南アフリカは10回。ナーセリーや研究者を訪ねる旅先としてドイツ、イタリア、チェコなどにも通い、さらに、イギリスとオランダを訪ねた回数は「50回を超えている」といいます。 

今では世界中に同好の士がいて、コロナ禍の前は訪ねるたびに多肉談議に花を咲かせていた小林さん。海外旅行のすべてが多肉植物を目的としたものだったのですね、と聞くと「いや、僕は鉄道も趣味だから、現地では鉄道で移動するんです。これも楽しみで。多肉植物は長旅で留守にできるのも長所です」と意外なお答え。 

貴重な多肉植物が所狭しと並ぶ庭の温室に、なぜか鉄道模型のレールが敷かれていた謎が解けた瞬間でした。

 

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温室の一角に敷かれた鉄道模型のレール。

 

小林 浩(こばやし・ひろし)/1937年、東京都出身。1960年代から「多肉植物趣味の会(のちの日本多肉植物の会)」、「国際多肉植物協会」などの設立に携わり、趣味としての多肉植物の普及を牽引。J.A.C.S.A.(ジャパン アソシエーション オブ カクタス アンド サキュレント アカデミー)代表。

 

*本インタビューは『趣味の園芸』2022年2月号に収載された記事を再構成したものです。(写真撮影:田中雅也)

 

小林 浩さん監修の「多肉植物図鑑」が刊行されました!

 

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NHK出版 決定版 多肉植物図鑑

内容紹介を見る >>

監修:小林 浩/編:NHK出版/定価:2,750円(本体2,500円+税10%)/A5判 並製272ページ(内カラー253ページ)/2022年1月19日発売

NHK出版で購入する Amazonで購入する

 

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