大枝垂れウメの早春~名木コレクション【趣味の園芸3月号こぼれ話・前編】
ウェブサイト「みんなの趣味の園芸」だけで読める連載「テキストこぼれ話」。『趣味の園芸』テキストの特集内容に関連して、誌面で紹介しきれなかった情報をお届けします。
3月号は、春を迎えるサクラ・ウメ・モモなどの花木を大特集。「春爛漫の旅 桜・梅・桃の競演」では、雄大な日本の春を実感できる、美しい3大花木の情景を紹介しました。こぼれ話の前編は、撮影に協力いただいた「鈴鹿の森庭園」の貴重なウメのコレクションを公開します。
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ウメが美しい早春、三重県鈴鹿市にある研究栽培農園「鈴鹿の森庭園」では、大枝垂れウメが数えきれないほどの花を咲かせます。
伝統的なウメの「仕立て技術」を未来に受け継ぐことを企図する20,000㎡もの園内には、「天の龍」「地の龍」と名付けられた、100年を越える古木で八重咲きの品種「呉服枝垂(くれはしだれ)」を中心に、約200本のウメの大株が植栽され、職人たちの技術によって見事な姿に仕立てられています。
200本のウメが織りなす花絵巻。2月下旬~3月中旬頃、園内はウメのふくいくたる香りにつつまれる。研究栽培農園のため、ふだんは一般に公開されていない庭園がこの時期だけ開放され、毎年ウメの見ごろに合わせて「しだれ梅まつり」が開催される。(2022年は、2月19日(土)~3月中旬頃までを予定)
樹齢100年を超える、貴重なウメの古木
ウメやサクラは古木になりにくいといわれ、長く樹齢を重ねたものはなかなか見かけません。また鈴鹿の森庭園によると、枝垂れウメは品種としての歴史が新しく、以前、大輪のピンクで八重咲きの呉服枝垂(くれはしだれ)を調査した際、「天の龍」より古いものは見つからなかったとのことでした。鈴鹿の森庭園の「天の龍」「地の龍」のような、100年を越える古木は大変珍しいものになります。
ウメの古木は盆栽として育てられているものが多いことから、樹齢を重ねて5mを超えるウメの木々がこれだけ立ち並ぶコレクションは、国内では他に例を見ません。大きな枝垂れウメを見上げるとき、たくさんの花をつけた枝がしだれる姿は、まるで天からウメの花が降り注いでいるかのようです。夜になりライトアップすると、日中の華やかな様子から一変、幻想的な雰囲気が味わえます。
なお、枝垂れウメの「仕立て技術」の存続と普及を目的としているので、花が終わるとすぐに剪定などを行い、来年のための準備に入ります(例年、開花の後半になると剪定の実演も行われています)。
大枝垂れウメの古木が見せる花絵巻~名木コレクション
鈴鹿山脈を背景に、"匠の技" に裏打ちされた梅花の競演はまさに春爛漫。テキストに載せきれなかった、高さ5m前後の巨木が織りなす迫力満点の花模様の一部を紹介します。(撮影/牧 稔人)
「天の龍」
品種は八重咲き呉服枝垂(くれはしだれ)。高さ約7m。樹齢100年以上と推定され、品種が確認されているなかでは日本最古といわれている。
「地の龍」
品種は八重咲きの呉服枝垂(くれはしだれ)。高さ約7m。樹齢100年以上といわれている。
「藤牡丹枝垂(ふじぼたんしだれ)」
鉢植えの枝垂れウメとして親しまれていることが多い。
「八重緑咢枝垂(やえりょくがくしだれ)」
咢や枝が緑色のウメ。ピンクや紅色のウメに交じって咲く白色の花は清らかな春を醸し出している。
「臥龍梅(がりゅうばい)」
品種は八重咲きの呉服枝垂(くれはしだれ)。まるで地をはう龍のような姿から名付けられた。年数を重ねたウメの大株ならではの味わいが出ている。
「紅千鳥(べにちどり)」
立ち性の品種、紅千鳥。濃い紅色の花は、ウメの花景色のアクセントになっている。
春の草花とのコラボレーション
株もとにクリスマスローズやスイセン。春の風情いっぱい!!
鈴鹿の森庭園 Suzuka Forest Garden | 公式 | (akatsuka.gr.jp)
後編は、サクラに魅せられたカメラマンによる絶景8選を紹介。
「テキストこぼれ話」では、『趣味の園芸』テキストの特集に関連して、担当編集者による講師へのインタビューなどをウェブ限定で公開しています(毎月2回更新予定)
『趣味の園芸』2022年3月号(2/21発売)
3月号「春爛漫の旅 桜・梅・桃の競演」では、鈴鹿の森庭園の大枝垂れウメ、福島県の三春滝ザクラや桃畑など、春の訪れを告げる3大花木が織りなす絶景を紹介しています。