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春爛漫!サクラに魅せられたカメラマンによる絶景8選【趣味の園芸3月号こぼれ話・後編】

春爛漫!サクラに魅せられたカメラマンによる絶景8選【趣味の園芸3月号こぼれ話・後編】

ウェブサイト「みんなの趣味の園芸」だけで読める連載「テキストこぼれ話」。『趣味の園芸』テキストの特集内容に関連して、誌面で紹介しきれなかった情報をお届けします。

 

3月号は、春を迎えるサクラ・ウメ・モモなどの花木を大特集。「春爛漫の旅 桜・梅・桃の競演」では、雄大な日本の春を実感できる、美しい3大花木の情景を紹介しました。

こぼれ話・前編では、撮影に協力いただいた「鈴鹿の森庭園」の貴重なウメのコレクションを公開しましたが、後編では「三春滝ザクラ」を撮影したカメラマンの桜野良充さんにインタビュー。これまでに桜野さんが撮影したサクラの中から、みなさんにご覧いただきたい絶景8選をご紹介します。

 

*  *  *

 

桜野良充「桜に託された日本人の祈りを撮る」

大学から30代手前まで海外で過ごした私にとって、帰国後、自然を撮影するときに最重要視したのが、日本人が日本列島の自然との間に育んできた祈りや畏れ、あるいは信仰の動機になったであろう自然美をカメラに収めることでした。

桜はそういった意味で最適な撮影素材でした。巨木になった一本桜のあの姿は決して自然だけで形成されたものではなく、数百年、千年もの間、世代を超えて桜を守ってきた人間と桜との合作の姿といえます。

古木の花を見るとき、我々日本人は先祖の想いもリレーしているのではないか。私はそう仮定しました。「時代を超えた想いを背負った古木は、やがて背景の山々、累代の守人たちの魂とともに郷土の神となる」――海外にも多く存在する桜が、日本人にとってより特別な存在になる理由がこの辺りにあるように思い、桜の撮影を続けています。

 

サクラの絶景 8選(撮影 桜野良充)

 

日本各地には古くから暮らしに溶け込み、地域の人々に親しまれてきた桜があります。今や巨木、古木となった桜に日本人の心の営みを見出そうと、桜野さんが撮影してきたサクラのコレクションから、圧巻の情景をご紹介。桜野さんによる解説とともに、お楽しみください。

 

1.雪村桜(せっそんざくら)

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撮影時期:4月中旬
種類:エドヒガン(枝垂)
所在地:福島県郡山市西田町大田字雪村

「室町時代の画僧、雪村周継が暮らしたといわれる庵にある桜の古木。樹齢400年ともいわれるエドヒガンザクラは、その大切に守られてきたことを偲ばせる幹肌や花の咲き方から、積み重ねてきた月日を語り掛けてきます。長年、風雪にさらされて枝が欠落した老木を散りばめるかのように彩る桜色、そして草庵の赤と竹林の緑は、笹の音までも取り込んで、雪村の完璧なキャンバスのようにそこにあります。」

 

2.七草木の天神桜(ななくさぎのてんじんざくら)

202203こぼれ話後編_七草木の天神桜.jpg

撮影時期:4月上旬
種類:エドヒガン
所在地:福島県田村郡三春町七草木殿作

「三春滝桜の三春町にある桜の巨木。株もとに天神様が祀られていることから、天神桜と呼ばれ、親しまれています。この地域では土地の境界線や神域に桜を植える風習があったそうで、この桜もその代表的な姿を現役で今に伝えています。非常に樹高が高くまるで天神様をやさしく守っているようです」

 

3.駒つなぎの桜

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撮影時期:5月初旬
種類:エドヒガン
所在地:長野県下伊那郡阿智村智里

「山間の水田脇にそびえたつ桜の巨木。調べてみると、〈駒つなぎ〉という冠を付け、その昔の武将伝説を残す巨樹は、この地以外にもにもあるようです。
この桜は私の故郷に近く、帰国後最初に撮影したいわゆる出発点の巨樹です。桜の名の由来の一説に、彼岸の頃に山の神が里に降りてきて農作の神になる、その際の宿り木として桜の木を選んだことからサクラ(サク=作/クラ=倉)と呼ぶという伝承を、東北地方の取材で聞いたことがあります。この説を唱えた先祖を想うとき、山と里の間にある水田脇にこの桜が立っている位置関係が、なんだかスッと心に落ちるところがあります。」

 

4.上石の不動桜(あげいしのふどうざくら)

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撮影時期:4月中旬
種類:エドヒガン(枝垂)
所在地:福島県郡山市中田町上石舘

「丘の上の、不動明王を祀る不動堂にある桜の古木。神域に植えられた桜は、長い年月のうちにそこにあるお堂と二つで一つの情景ように、その風土に馴染んでいくように思えます。その昔、寺子屋に使われたとも伝えられる不動堂には落書きが残され、満開の頃はその傍らで今も家族連れの子供の声が響きます。」

 

5.二反田の桜

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撮影時期:4月中旬
所在地:長野県上水内郡小川村大字高府二反田

「長野市から白馬村へと抜ける途中の小川村には、完璧とも言える美しい桜の憧憬が広がっていました。北アルプスを背景にして、まさに里がピンクに染まる風景は、2000年以降、土地の人々の手によって8ヘクタール1,000本以上という規模で桜が植栽され、意図的に生み出されたものです。先祖が守り作ってきた憧憬を今に生きる人が次に生きる世代のために伝え、創造する。現在進行形の日本の祈りが目視できる場所だと感じました。」

 

6.水中のしだれ桜(みずなかのしだれざくら)

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撮影時期:4月下旬
種類:エドヒガン(枝垂)
所在地:長野県上高井郡高山村大字高井

「寛保2年(1742)、この土地が水害に襲われた後、土地の守り神である鹿島神社を祀ったことに由来すると伝えられる、樹勢の強い桜です。別名、鹿島のしだれ桜とも呼ばれているそうです。はっきり江戸時代からの樹齢が判明している稀有な桜でもあり、夕方、山側から撮影することで、眼下に広がる長野盆地を背景に逆光で薄墨色の桜が浮かび上がるような表情を見せます。」

 

7.弁天さんのしだれ桜

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撮影時期:4月下旬
種類:不明
所在地:長野県須坂市大字豊丘中灰野梅ノ木

「山間の高台にある弁天池という湧水池のほとりにあることから、その名で呼ばれている桜の古木です。弁天池は土地の人々には大切な水源でもあり、水神が祀られていました。そしてそのすぐ下には累代の墓地があり、さらに下ると今も集落の人々の暮らしがあります。
古来日本では人の魂は死後、山に上がるという信仰があり、墓地を山の傾斜地に作った地域が多く見られます。この地はそんなありし日の日本の風土を今に伝える場所と思い、あえて眼下の集落を入れて撮影しました。」

 

8.越代の桜(こしだいのさくら)

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撮影時期:5月初旬
種類:ヤマザクラ
所在地:福島県石川郡古殿町大字大久田字越代

「丘の上にそびえたつ巨木です。丘の真下から見ると、この巨樹の真ん中あたりは北極星が重なるという位置関係にあります。
無風の新月の夜に満開が重なる条件が整うと、長時間露光の天体撮影で、星々が山桜の周りを回るような写真が撮れることでも有名です。天体と古木。まさに人の時代を超えて想いを馳せることができる桜です。」

 

桜野良充(さくらの・よしみつ)

1978年生まれ、岐阜県出身。ロケーション・自然写真家。英大学院卒業後ロンドンでファッションカメラマンとして活動。ファッションブランドの店内粧飾として花の写真を提供したのがきっかけで自然写真に転向。帰国後NHK趣味の園芸などの園芸誌・アウトドア雑誌などで撮影を手がける。その他各地で写真教室・講演会。ガーデニング番組の出演等。

 

前編はこちら!

 

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テキストこぼれ話」では、『趣味の園芸』テキストの特集に関連して、担当編集者による講師へのインタビューなどをウェブ限定で公開しています(毎月2回更新予定)

 

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3月号「春爛漫の旅 桜・梅・桃の競演」では、鈴鹿の森庭園の大枝垂れウメ、福島県の三春滝ザクラや桃畑など、春の訪れを告げる3大花木が織りなす絶景を紹介しています。

 

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3月号の内容はこちら

 

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