鈴木満男さん、「温暖化時代のバラ栽培」ってどういうことですか?【後編】
最近、バラの栽培方法が変わってきたことをご存じでしょうか。背景には急激な気候変動があります。
温暖化時代のバラ栽培の新常識を網羅した『温暖化に負けない!バラ栽培のすべて』の刊行を記念して、バラ名人の鈴木満男さんに、詳しくお話しを伺いました。
バラ園で管理を担当するプロには常識になりつつあるこの変化について、前後編でお届けします。
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もう一つの栽培上の大きな変化は剪定時期とのことですが、どういうことでしょうか。
まず冬の剪定時期ですが、これはすでに10年ほど前から変わり始めていました。関東地方以西の平野部では、それ以前は2月が適期でした。しかし今は1月が適期です。最近は2月になると芽が動いてしまうので、それから切るのでは遅いのです。もう一つはつるバラの誘引・剪定で、私は夏に行うことをおすすめします。
つるバラを冬ではなく夏に誘引・剪定するのですか。
冬にも行いますが、枝が長く伸びる一季咲き性のつるバラや、枝が堅い四季咲き性のつるバラなどは、冬だけでなく夏に整枝(誘引・剪定)すると、いろいろ利点があります。
第一に、大型化する台風への対策になります。つるバラは枝がよく伸びるぶん、暴風雨にさらされて枝が折れたり葉が傷んだりといったことがありますが、7月中に整枝しておくとダメージを最小限に抑えられます。それだけではなく、夏は枝が柔らかくて誘引が容易ですし、夏のうちに作業をしておけば冬の誘引・剪定でやるべきことが減って、ラクになります。
これからはつるバラも、ブッシュローズ(木立ち性)やシュラブローズ(半つる性)と同様、夏に剪定しようということですね。
一つ注意点があります。ブッシュやシュラブの夏剪定は9月に入ってからですが、つるバラはその前です。8月でも遅い。8月になってから切ると枝が充実せずに花芽をつくれない可能性があるので、必ず7月中に行います。ただし、関東地方より北では生育期間が短いため、多すぎる枝を間引く、あるいは長すぎる枝を整理する程度にしておきます。
伸びた枝先に開花するタイプのつるバラ「テラコッタ」の整枝をする鈴木さん。必ず7月中に誘引・剪定を終える。(撮影:田中雅也)
よくわかりました。温暖化に対応するには十分な水やり、冬剪定を1か月早めること、つるバラの夏の整枝が重要ということですね。
最後にもう一つ、とっておきの対処法をお教えしましょう。温暖化に負けずにバラを楽しもうと思うなら、なるべく新しい品種を育てることです。
世界中で毎年たくさんの新品種が誕生しますが、最近は耐病性、耐暑性が強い品種がふえています。それらを選べばあまり手がかからず、比較的容易に育てることができます。耐病性品種を選べば薬剤の量を減らせるので、散布の手間と環境への負荷の両方を抑えることもできます。バラ選びの際は、そういう点も含めて品種を確認してください。
<終わり>
▼前編はこちら!
鈴木満男さん、「温暖化時代のバラ栽培」ってどういうことですか?【前編】 >
*本インタビューは『趣味の園芸』2022年4月号に収載された記事を再構成したものです。
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著:鈴木満男/定価:1,760円(本体1,600円+税10%)/AB判並製 128ページ(オールカラー)/2022年3月17日発売
鈴木満男(すずき・みつお)
バラ栽培研究家。約40年にわたり、バラの種苗会社(京成バラ園芸)で生産者への技術指導やバラ園の管理などを担当。定年退職後も各地のバラ園で講習会などを続け、種類や品種ごとの特性、気候風土に合わせたバラの管理技術は多くの栽培家を唸らせている。バラ界のレジェンドにして、プロ中のプロ。『NHK趣味の園芸 12か月栽培ナビ① バラ』『NHK趣味の園芸 ガーデニング21バラを美しく咲かせるとっておきの栽培テクニック』など、著書も多数。