土の話を掘り下げる〈後編・目指すは「山の土」 矢澤さんの理想とは?〉【趣味の園芸4月号こぼれ話・後編】
ウェブサイト「みんなの趣味の園芸」だけで読める連載「テキストこぼれ話」。『趣味の園芸』テキストの特集内容に関連して、誌面で紹介しきれなかった情報をお届けします。
今回は、4月号の「ようこそ!花のある暮らし」特集でビギナーにもおすすめの花を教えてくれた矢澤秀成さんが登場。前編では、園芸ビギナーの編集部員の疑問に、わかりやすく答えてくれました。
後編では、矢澤さんご自身のこだわりについて聞いていきます。
編集部(以下、編):4月号の「はじめてでも安心!ガーベラ栽培」(P.31参照)で赤玉土:腐葉土:魚粉:パーライト=5:4:2:1を、矢澤さんこだわりの配合として紹介しました。
↑4月号で紹介した用土。(撮影:田中雅也)
矢澤秀成(以下、矢):そうだね。赤玉土と腐葉土と動物性の肥料(有機性肥料)を5.5:4.5:2ぐらいで混ぜて、2週間馴染ませたものをベースにしてる。植物に合わせて、これにいろいろとアレンジを加えてく感じかな。ガーベラはとにかく水はけをよくしたいから、パーライトを一割加える。
編:「動物性の肥料(有機性肥料)」がガーベラの場合は魚粉なのですね。
矢:魚粉は乾燥させた魚を砕いたもので、窒素やリン酸を多く含むのが特徴。ガーベラは花をきれいに咲かせたいから魚粉にしたよ。ついでに言っておくと、魚粉っておかかみたいな匂いがするでしょ?そのまま外に置いておくと、ネコとかキツネとかが食べに来ちゃうから気をつけて(笑)。保存するならプラスチックケースなどに入れて物置へ。施肥するときはしっかりと土に混ぜ込んでね。
↑土はしっかり混ぜ込んで使う。(撮影:田中雅也)
編:たしかにおかかの匂いでした。そんなこともあるのですね。「動物性の肥料(有機性肥料)」は他にどのようなものを使いますか?
矢:動物性の堆肥として、他には牛ふん、馬ふん、豚ぷん、鶏ふんを使うよ。
まず知っておいてほしいのは、動物性の堆肥は動物のふんだけではなくて、他におがくずや藁などが混ぜられているということ。おがくずや藁などが混ざっていることで、肥料だけではなく、土壌改良材としての利便性が上がるよ。中にはふんの割合が多いものや少ないものもあるから、用途にあった種類を選ぼうね。
牛ふん堆肥は主な動物性の堆肥の中でも一番ベーシックだね。牛ふん堆肥と馬ふん堆肥は肥料分も含んでいるけど、土壌改良材としてよく使われる。牛や馬はワラなどの植物を食べるから、ふんにも植物の繊維質が多く含まれていて、土をふかふかにしてくれるよ。あと馬ふん堆肥はバラによく効くっていわれてる。
豚ぷん堆肥は牛ふん堆肥や馬ふん堆肥よりもふんの割合が多くて、繊維分は少ないけど肥料分が多いみたいだね。ふんが多いせいか、とにかく臭い(笑)!でもよく効く!実験してみたら豚ぷんと魚粉もバラによく効いたよ。匂いが気になる人は発酵した豚ぷんを使用しているものや牛ふん堆肥と混合したものを購入してみて。
鶏ふんも臭い!カルシウムやリンなど、肥料分が多くてすごく良いんだけど、使うと土のpHが上がるから、石灰と一緒に使用するときは注意してね。
もちろん化成肥料を使ってもいいんだけどね。臭くないし、肥料分を微調整しやすくて、追肥もしやすいから。でも僕は動物性の堆肥をちゃんと使いたい。
編:それはなぜでしょうか。
矢:自然に近い状態の土がよいと思っているから。枯れ葉や落ち葉などの植物由来の堆肥と、フンや死骸などの動物由来の堆肥がバランスよく混ざっているのが山や森の土だよね。そういう土をイメージして、土をつくっているんだ。
編:山や森の土が理想なのですね。
矢:そう。父が国有林の管理や調査をする仕事をしていて、小さいころからよく一緒に山に行っていたんだ。やっぱりカブトムシの匂いがするような土がいいよね。
編:幼いころから自然や植物が身近だったのですね。園芸に興味を持つのも早そうです。
矢:5歳のころにはオシロイバナの育種をしていたよ。花色を赤と白の半々にしたり、45度分だけ白になったり、とにかく面白いんだよね。
↑オシロイバナ。花色が面白い。(撮影:福田稔)
編:そんなに早くから!その話も気になります。
矢:また今度ね(笑)。話がそれちゃったけど、とにかくみなさんも自分でいろいろな土を試してみてほしいな。今は培養土もいろいろ売っているから、それですぐ植物を育てられるんだけど、自分で一から土をつくって試行錯誤してみるのも園芸の楽しみの一つだから。
編:私も自分でやってみたくなりました!今回はありがとうございました。
<終わり>
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