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バラも室内で栽培が可能に? 室内緑化の未来を考えていこう!

バラも室内で栽培が可能に? 室内緑化の未来を考えていこう!
植物に必要な光の強さや光合成に使われる波長を持つLED照明の使用で、室内でのバラ栽培が可能に。白熱灯と異なり熱くならないので、植物の近くで使用できる。

3月26日に全国鉢物類振興プロジェクト協議会および屋内緑化推進協議会の共催による「光に配慮した屋内緑化マニュアルの特別講習会」が開催されました。

LEDの発達などで、家庭やオフィスの室内でも植物を育てやすくなってきています。屋内緑化のもたらす効果そして未来について「ポストコロナ時代におけるバイオフィリア」のテーマで登壇された兵庫県立大学/兵庫県立淡路景観園芸学校教授の豊田正博さん、「光に配慮した屋内緑化のすすめ」について講演された緑化技研代表取締役の藤田茂さんにお話を伺いました。

 

――バイオフィリアって何ですか?

豊田さん:Bio(バイオ)は生命、philia(フィリア)は愛情で、「生命愛」と訳されます。「人は生まれつき、自然、動物、植物との結びつきを好む」傾向にあるというもので、ハーバード大学のエドワード・O・ウィルソン教授、イエール大学のスティープ・R・ケラート教授による「バイオフィリア仮説」で世界的に注目されました。

 

――緑を見るとストレスが回復するということですか?

豊田さん:見通しのきく緑の景観がストレスや痛みの感じ方を軽減し、免疫力回復に寄与することは昔から知られていました(*1)。新型コロナウイルス感染拡大は、多くの人々に慢性的なストレスを与えましたが、コロナ禍で植物を育て始めた人も多く現れました。リモートワークでパソコン画面背景に植物がある画像を使用する人々も増えました。

2020年1月、「3分間のネイチャーブレイク」という研究がアメリカ園芸学会の「HortTechnology」誌に掲載され、CNN、NBCのWebニュースで取り上げられました(*2)。疲れやストレスを感じたときに気に入った植物を3分間何も考えずに眺めると心拍数が下がり、ストレス状態から回復するというものです。

 

――ポストコロナでは植物と人とのかかわりはどうなっていきますか?

豊田さん:生産性向上をあと押しする要因として、緑が有効なことがわかってきています。人は生まれながらにして自然や動植物とのつながりを求める特性があるという考えを、環境のデザインに意図的に表現した「バイオフィリックデザイン」が生活空間に多く見られるようになると思います。

家庭内はもちろんオフィスでも、もっと植物を取り入れていくようになるでしょう。そして照度計や植物育成用LED照明を用いた「枯らさない」提案を取り入れた屋内植物栽培方法が普及していくと思います。

 

室内緑化の未来_03.jpg

同時期に開催された「世界らん展2022」での屋内緑化推進協議会展示。右はオフィスでの緑化例。上部など柱に沿って吸水装置を設置。左の観葉植物は、鉢の下に吸水システムが内蔵されている。

 

――LEDってそんなにすごいものなんですか?

藤田さん:私が研究を始めた40年前にはまだLED自体がなく、室内栽培における光が問題とされていました。ですが植物育成LED照明はここ数年で比べものにならないほど、進化しています。光の明るさを示す指標に「照度」があり、単位としてlx(ルクス)などが使われますが、植物を屋内で育てる場合の最低生育照度係数を知ることで、「レースのカーテン越しの窓辺」などの勘に頼るものではなく、数値として植物を管理できるようになります。

 

――育てられる明るさで植物の分類も可能に?
藤田さん:もちろん可能です! 例えば表のように最低生育照度係数によって栽培可能な植物を正しく把握できるようになります。

 

最低生育照度係数(lx) 植物の例
500 ポトス、サンセベリア、スパティフィラム(※)
1,000 アンスリウム、エバーフレッシュ、ベンジャミンゴム
2,000 コチョウラン(※)、パキラ、シクラメン(※)
3,000 エアープランツ、エラチオールベゴニア(※)バラ類(※)
5,000 オリーブ、ゼラニウム(※)ハイビスカス(※)

※2年目からの花芽形成時にはもっと高い照度が必要。

 

――植物の置き場所に自由度が生まれますね。
藤田さん:集合住宅では今まで、ベランダかもしくは日の差す窓際で、とされていました。太陽光は季節によって強さや日照時間が異なり、ひさしなどにより自然光が差し込む室内の明るさも異なります。意外と知られていないのが、植物は西向きに適しているということ。室内における日照時間の研究検証で初めてわかったことですが(笑)。植物育成LED照明の活用で、奥まった室内や寝室など外からの光が得られない場所でも植物栽培が可能になります。

 

室内緑化の未来_02.jpg

「世界らん展2022」での屋内緑化推進協議会による壁面植物栽培展示。狭い場所でも効率よく植物を育てられる。

 

――室内緑化の未来とは?
藤田さん:人が人である以上、植物との生活は必然といっても過言ではありません。室内緑化においては光だけでなく、資材や人工的培地など、室内でよりよく植物を育ててくためのさまざまな栽培システムが研究され、徐々にですが普及も始まっています。
「この植物を育ててみたい」「でも枯らしてしまった」という苦い経験は誰しもあるかと思います。私たちの暮らしの中で植物がよりよい状態で育ち、そして我々もごく当たり前に緑と共存し癒される、そんな時代がもうすぐ来ると思いますよ。

 

*1 Ulrich R.S. 1984.「窓からの自然の眺めが術後の回復結果に及ぼす影響」View through a window may influence recovery from surgery: Science.
*2 Toyoda M., 他. 2020.「机の上の小さな室内植物がオフィスワーカーのストレスを軽減する可能性」Potential of a Small Indoor Plant on the Desk for Reducing Office Worker's Stress. HortTechnology.

 

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