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アジサイの魅力を深掘り!庭木のプロフェッショナル・川原田邦彦さんに聞きました。【趣味の園芸6月号こぼれ話・前編】

アジサイの魅力を深掘り!庭木のプロフェッショナル・川原田邦彦さんに聞きました。【趣味の園芸6月号こぼれ話・前編】

ウェブサイト「みんなの趣味の園芸」だけで読める連載「テキストこぼれ話」。『趣味の園芸』テキストの特集内容に関連して、誌面で紹介しきれなかった情報をお届けします。

 

6月号「1鉢置くならヤマアジサイ」で、日本古来のアジサイの魅力を教えてくれた川原田邦彦さん。茨城県で100年以上続く園芸場の四代目で、アジサイをはじめ多くの庭木や宿根草の生産・販売を手がける「植物の達人」です。そんな川原田さんに、誌面では語り尽くせなかった「アジサイ」の魅力について、さらに詳しく伺いました。

 

贈答品や家庭で楽しむ鉢花として、絶大な人気を誇るアジサイ。しかし、その由来をひも解くと、不思議な歴史があると川原田さんは言います。

 

アジサイは、ガクアジサイが基本種で、これはもともと日本の野山に自生していた花木です。しかし、江戸時代は庶民の間でも植物を育てる「園芸」が大流行したのに、アジサイはまったく人気がなかったようなのです。文献にもほとんど登場しません。その理由は2つほど考えられます。1つは、アジサイの別名が「よひら」であること。この名は、花びらのように見える蕚弁が「4枚」あることに由来しますが、ご存じのとおり、日本人にとって「4」は縁起の悪い数字です。またもう1つは、アジサイの花色が変化することです。忠義を重んじて変節を嫌う江戸時代の人々には、受けが悪かったのでしょう。

 

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アジサイの蕚弁は4枚が基本。写真は、ヤマアジサイ「伊予の乱髪」。(撮影:丸山滋)

 

日本人には人気のなかったアジサイですが、鎖国中の日本にやってきたヨーロッパ人には目新しく、非常に魅力的な花でした。幕末、長崎に来日して『日本植物誌(フローラ・ヤポニカ)』を編纂したシーボルトもアジサイを愛した1人です。彼が、日本人妻・お滝さんの名前にちなみ、アジサイを「ハイドランジア・オタクサ」と命名して紹介したことは、よく知られていますね。

 

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シーボルトが愛したアジサイ「オタクサ」。写真は、咲き始めの花姿。(撮影:伊藤善規)

 

ヨーロッパに伝わった日本のアジサイは「東洋のバラ」と呼ばれ、またたく間に人気となります。あちこちで盛んに育種が行われ、新品種が続々と登場しました。それらが明治から昭和にかけて日本に逆輸入され、「西洋アジサイ」という名で呼ばれることになります。しかし前述のとおり、ヨーロッパから里帰りした「西洋アジサイ」の親株は、すべて日本のアジサイなのです。ですから「西洋アジサイ」という名前は奇妙...というより、誤りですね。海外で作出されたものの、日本のアジサイを交配親としているので、性質も日本のものと変わりません。今も園芸ショップの店頭で、「西洋アジサイ」の名で売られている鉢を見かけることがありますが「日本生まれなのになあ...」と、複雑な思いです。

 

――確かに、アジサイは学名の「ハイドランジア」で呼ばれたり、「ガクアジサイ」や「ホンアジサイ」という名もあったりして、混乱しがちです。

 

手まり咲きの「アジサイ」とガク咲きの「ガクアジサイ」は、別種と思っている人もいるかもしれません。何を隠そう、私自身も、知識がなかったころには「違うもの」だと思っていました。しかし、これらはじつは同一種の植物で、品種が違うだけです。ガクアジサイが基本種で、中央の両性花が装飾花に変化したのがアジサイ。もともと自然界に手まり咲きもあり、有名な「オタクサ」や「ヒメアジサイ」は、このタイプです。そもそも、アジサイ属のほとんどの種は「ガク咲き」と「手まり咲き」両方の性質をあわせ持っています。そのため、品種改良で多種多様な花が誕生しやすいのでしょうね。

 

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ガク咲き(撮影:桜野良充)

 

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手まり咲き(撮影:田中雅也)

 

このように、名前はややこしいかもしれませんが、アジサイは日本生まれで、古くから日本の気候風土に適応した育てやすい植物です。鉢植えでも庭植えでも楽しめるので、お気に入りを見つけて、まずは1株から育ててみてほしいですね。

 

ちなみに、アジサイは雨が似合い、日陰でも育つイメージがありますが、しっかり日光に当てたほうがよく育つんです。そもそも、植物のなかで「日陰を好む」ものは、私の経験上、全体の5%くらい。植物は基本的に太陽が好きなのです。「耐陰性がある」という植物の多くは「日陰にも耐える」だけで「日陰が好き」なわけではありません。そこは、間違えないであげてほしいですね。

 

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アジサイは日本生まれで、日本の気候風土に合う花木。(撮影:田中雅也)

 

後編は、川原田さんが「とくに好き」というヤマアジサイの研究秘話に迫ります!

 

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川原田 邦彦(かわらだ・くにひこ)

茨城県牛久市で庭木や宿根草などの生産、販売、造園などを手がける「確実園園芸場」を経営。名前のとおり「お客様のところで枯れない、確実なもの」を販売するのがモットー。2万平米の園内には、5000品種もの植物が育つ。アジサイに造詣が深いが、フジの収集もライフワーク。日本植木協会会員。

(撮影:田中雅也)

 

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テキストこぼれ話」では、『趣味の園芸』テキストの特集に関連して、担当編集者による講師へのインタビューなどをウェブ限定で公開しています(毎月2回更新予定)

 

『趣味の園芸』2022年6月号(5/20発売)

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日本各地に自生しているヤマアジイ。楚々とした風情で、人気が高まっています。日本原産であるため、育てやすいことも魅力です。川原田邦彦さんが、おすすめ品種や楽しみ方を教えてくれました。

 

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6月号の内容はこちら >

 

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