命きらめく夏の庭~連載「イーサゴの庭仕事」第5回(2022年8月号)
北国から毎月お届けするテキスト連載「岩手の四季をつむぐ イーサゴの庭仕事」。
岩手県花巻市内に位置するイーサゴ ナーセリー&ガーデン。早池峰山(はやちねさん)を望むのどかな田園風景の中、営むのは、及川洋磨さん・真由美さんご夫妻。自作のクレマチスや、寒冷地向きの植物とともに、北国の厳しくも美しいナチュラルガーデンの1年をお送りします。
8月号掲載、第5回の内容をご紹介!
第5回「命きらめく夏の庭」
北東北の夏に打ち克つ植物のエネルギー
朝夕は心地よい涼しさを感じるものの、日中は35℃を超える日もある、岩手県花巻市の夏。8月は植物だけでなく、庭作業をする人間にとっても過酷な季節です。特にイーサゴの庭は斜面や山砂の土壌が多いために乾燥しやすく、生育に適した植物が限られます。そのため、夏越しを考えると、理想的なデザインを先に決めて植物を選ぶのではなく、乾燥に耐え、ローメンテナンスで育つ植物選びが最優先になります。厳しい暑さの中、最低限の管理で育つ植物の姿は、整えられすぎずに自然と野性味を帯び、生命力がみなぎります。
8月にはボタンヅルなどクレマチスの原種の一部は開花しますが、大半のクレマチスは花を終えています。宿根草も花を終えるものが多く、それまでの庭とは雰囲気がガラッと変わります。花が終わった植物が暑さから身を守るためにおとなしくしている傍らで、存在感を増してくるのが、エリンジュームやエキナセアなどの植物です。厳しい暑さと乾きの中、それに負けじと調子よく育つ植物の生命力に触れると、穏やかな時期の庭以上のエネルギーを感じます。
この時期の庭は一般公開をせず、秋のオープンに向けてのメンテナンスがメインです。夏の庭をご覧いただけないのは残念ですが、本業のクレマチスの育種と生産で多忙な日々。夏の庭の手入れをしながら、過酷な環境の中でクレマチスがどう生育していくのか、秋に向けて二番花をどう咲かせるのかなど、この時期にしか得られない多くを学び取る大事な時期です。
(「洋磨さんのガーデン便り」より)
盛夏の庭を彩るたくましくも美しい宿根草風にそよぐグラス
夏の盛りのこの時期、クレマチスはすっかり花が終わり、ふわふわとした綿毛のような果球が光線に輝きます。二番花と株のリフレッシュのため、クレマチスをバッサリ剪定するので、庭の主役はクレマチス以外の植物へと移り変わります。
真夏の主役を務める宿根草はモナルダやフロックスなど、草丈50〜80cmのものが中心。ほかにも、風にそよぐ姿が涼しげなパニカムなど、大型のグラス類もポイント的に植えています。これらの原産地は、多くが北米や中央アジアの乾燥地帯。夏も基本的に無灌水というイーサゴでたくましく育つ姿を見ると、違う土地でも環境条件さえ合えば育つ植物の適応能力の高さに感心させられます。
(「真由美さんの庭仕事便り」より)
テキストで、ガーデンの美しい風景をたっぷりとご覧ください。
★この号に掲載されています
園芸研究家 及川洋磨(おいかわ・ようま)
及川フラグリーンにてクレマチスの新品種の開発と苗の生産に従事。クレマチスの魅力と可能性を発信するためイーサゴ ナーセリー&ガーデンを立ち上げ、ナーセリーを担当。
ランドスケープデザイナー 及川真由美(おいかわ・まゆみ)
ランドスケープ設計事務所所での勤務を経て、及川フラグリーンへ。以来、圃場内の庭の計画と手入れの実務を担当している。イーサゴ ナーセリー&ガーデンではガーデンを担当。
※ショップおよびガーデンは期間限定でのオープンとなります。詳しくはHPをご覧ください。
★テキスト連載「イーサゴの庭仕事」
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