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2人の育種家に聞く、クリスマスローズ育種のあれこれ〈前編・広瀬園芸~マニアが唸る花と新しい色~〉趣味の園芸2月号こぼれ話

2人の育種家に聞く、クリスマスローズ育種のあれこれ〈前編・広瀬園芸~マニアが唸る...

ウェブサイト「みんなの趣味の園芸」で読める「テキストこぼれ話」。『趣味の園芸』テキストの特集内容に関連して、誌面で紹介しきれなかった情報をお届けします。

 

今回は、2月号特集内の「クリスマスローズ大図鑑」で撮影にご協力いただいた広瀬園芸・広瀬利彦さんと吉田園芸・吉田順一さんが登場。数々の名花を生み出してきたお二人から伺った、育種にまつわる秘話をご紹介します。

 

前編は、広瀬園芸・広瀬利彦さんです。

 

「マニアが唸る花」はどう生まれる!?

 

広瀬さん(以下、広):クリスマスローズの育種をしていておもしろいのは、変異の幅広さです。同じ親からとったタネでも、色や形、株姿にさまざまな変異が出てきます。夢がありますよね。うちは元々山野草の生産を行っていたのですが、山野草はタネをまいてもあまり変異が出ません。

 

編集部(以下、編):テキストの「クリスマスローズ大図鑑」(P28-41)の花々も本当にバリエーション豊富です。

 

広:おもしろい特徴をもった親株をそろえて、根気強く、たくさんタネをまけば、「クレオパトラ」や「ブラックマジック」のような花も現れます。もちろん、このような花は簡単には出てきませんが。

 

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左:「クレオパトラ」。カールした弁先が特徴的なシリーズ。

右:「ブラックマジック」。花弁の内側の光沢が特徴。葉柄まで黒く、渋い株姿が人気。

(撮影:桜野良充)

 

編:どちらのシリーズも個性的です。

 

広:こういう花は、狙ってもつくれません。育種の過程で、想像を大きく超えた突然変異が起こることがあります。それを根気強く待つんです。

ただ、頑張っておもしろい花を生み出しても、すぐに受け入れられるとは限らない、というのがつらいところです。例えば、「ブラックマジック」は、はじめはそれほど人気が出ませんでした。世に出した当時は、一般に丸弁で形の整った花が好まれていて、注目しているのは一部のマニアックな愛好家だけでした。マニアに響けばよいと思って出していましたが、時代が追いついてくれてよかったです(笑)。

 

編:玄人好みな花のなかに、これから流行するものがありそうです。

 

広:最近はこれがマニアにうけましたよ。

 

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メタリック調の色合いが特徴の「彗星」シリーズのニュータイプ。マニアがざわつく花らしい。(撮影:桜野良充)

 

編:......いかにも玄人好みな感じがします。マニアはこの花をどう見るのでしょうか。

 

広:「どうやってつくるんだろう」と考えながら見ています。クリスマスローズ展などに行くと、そういう会話をしている人たちがいると思いますよ。マニアどうしで考えてもつくり方がわからない花がマニアにとって楽しい花です。

 

編:マニアックな見方! これから「彗星」がどうなっていくのか、楽しみです。

 

青いクリスマスローズ!?

 

広:テキストにのったオリジナル品種のうち、「ソレイユ」は突然変異ではなく、ある種順当に生まれた花です。

 

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「ソレイユ」。花弁の外側に向かって少しずつ色が抜けていくのが特徴。(撮影:桜野良充)

 

編:「順当に」とはどういうことでしょうか。

 

広:オレンジの花を目指して交配していたら出てきたんです。オーレア系*の黄色と赤・ピンク系の花を交配していました。オレンジではありませんが、目指していた方向性に沿った花だと思います。

*オーレア系:緑色の色素が全体に少なく、葉が黄色く発色する株。花色がクリアで、退色しにくい。

 

編:そういえば、オレンジのクリスマスローズは見たことがありません。

 

広:まだオレンジはないと思います。ワインレッドなどの暗めの赤は昔からありますが、クリアなオレンジや明るい赤はまだこれからです。赤系の原種はありますが、暗めなので、明るくするのが難しいんです

今のところ、オーレア系の白花を地色にして赤系の色をつけていくとクリアな色にできるのではないかなと考えています。いつかは「広瀬の赤」といえるような赤花をつくりたいです。

 

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オーレア系の白い花。(撮影:桜野良充)

 

広:あと色の話でいうと、青いクリスマスローズの育種も手掛けています。ヘレボルス・パープラセンス(Helleborus purpurascens)という花弁の裏が青っぽい原種があって、この原種からもしかしたら......と考えています。どこまでを青として認めるか、という話にもなりますが。

 

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ヘレボルス・パープラセンス(撮影:今井秀治)

 

編:青いクリスマスローズ! 夢が広がりますね。興味深いお話をありがとうございました!

 

後編は、吉田園芸・吉田順一さんにお話を伺います!

後編はこちら

 

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広瀬利彦(ひろせ・としひこ)

育種家/山梨県でクリスマスローズの育種・生産を行う。標高700mの立地はクリスマスローズの栽培に最適。気候のよさをフルに活かし、育てやすく、個性的な花を次々と生み出す。講師の野々口稔さんや後編に登場する吉田順一さんと、一緒にクリスマスローズの自生地巡りに行くことも。

 

『趣味の園芸』2023年2月号(1/20発売)

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「今年はどんな花が現れるのか」毎年シーズンを心待ちにする野々口稔さんと、今年は広瀬園芸、吉田園芸を訪ねます。世界的にも有名な両ナーセリーで出会った、"新しいクリスマスローズ"をご紹介します。

 

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『趣味の園芸』2023年2月号

 

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テキストこぼれ話」では、『趣味の園芸』テキストの特集に関連して、担当編集者による講師へのインタビューなどをウェブ限定で公開しています(毎月2回更新予定)

 

 

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