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山野の美しい花々を咲かせるために...。六甲高山植物園が挑み続ける陰の努力と喜びに迫りました〈前編〉趣味の園芸3月号こぼれ話

山野の美しい花々を咲かせるために...。六甲高山植物園が挑み続ける陰の努力と喜びに迫りました〈前編〉趣味の園芸3月号こぼれ話

ウェブサイト「みんなの趣味の園芸」で読める「テキストこぼれ話」。『趣味の園芸』テキストの特集内容に関連して、誌面で紹介しきれなかった情報をお届けします。

 

今回は、3月号特集内の「六甲で出会う山野の花」で撮影にご協力いただいた六甲高山植物園の学芸員で植栽担当もされている三津山咲子さんが登場。今年で開園90年を迎えるという歴史ある植物園が取り組んでいる植栽の秘密や、これからの季節に見どころとなる花々について伺いました。

 

カタクリとキクザキイチゲの群生に感動!

 

編集部(以下、編) 「3月号」でまず目が奪われたのが、カタクリとキクザキイチゲの群生の写真(P.42~43)ですが、あの光景はいつごろに見られるものなのでしょうか?

 

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樹林区で見られるカタクリ(紫)とキクザキイチゲ(水色)の群生。(撮影:河内 彩)

 

三津山さん(以下、三):カタクリは、園内のいろいろなところに咲きます。3月下旬から1か月くらいの間に日当たりのよい場所から順番に咲いていきますね。カタクリは、それこそこれまでの植栽担当者たちが、園内のいろいろな場所にタネをまいてきて、それが今、こういう美しい群生を生み出してくれたと思っています。

 

:少しずつ実験的にまかれていたのですか?

 

三:じつは、結構大胆なまき方をしていたようなんです。「この辺りはカタクリがきれいに咲きそうだな」と思う場所に、植栽担当者がタネを『花咲かじいさん』のようにまいたり(笑)。

 

編:それは、意外なまき方ですね!

 

三:でも、ただタネをまいて咲いてくるのを待っているだけでは、もちろんダメなので除草や草刈りはきちんとしています。特にカタクリが咲いている樹林区は放っておくと、ササに覆われてしまいますから。これが結構大変な作業なんですよ。

 

編:まるで、自生しているように見えますが、その陰には職員の方のご苦労があるのですね。

 

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カタクリの開花は、3月下旬~。可憐な姿が美しい。(撮影:河内 彩)

 

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キクザキイチゲ。開花は3月下旬~。(撮影:河内 彩)

 

毎年、砂を洗う!?

 

三:メンテナンスという点でいえば、一番大変なのは、ロックガーデンです。3,000m級の高山でないと見られない高山植物たちを見られるということで、とても人気のあるエリアです。だからこそ、いろいろな工夫をして栽培しています。

 

編:例えば?

 

三:ロックガーデンの砂を洗っています!

 

編:砂を洗う!?のですか?

 

三:はい、秋から冬の閉園期間中にかけて、部分的に地上部から30~50cmくらいは掘り上げて砂を入れ替えています。やはり、ここは本当の高山ではないので梅雨もあって、湿気もありますから、砂に雑草やコケや微塵がついてしまうんです。そうすると、生育しづらくなるので、水洗いしてきれいにしてから、使える砂は戻すようにしています。砂の量が多いので、水洗いは通年しています。特に、冬の寒い中でも作業してますので、かなり大変なんです。

 

編:そんな大変なご苦労があるなんて、知りませんでした!

 

:さすがに1年で全部の砂を洗うのは、不可能なので、数年かけて少しずつ洗ってよい砂に戻しています。

 

編:そんなふうに丁寧に管理されている結果、身近な場所ではなかなか会えない植物たちを見ることができているのですね。植物を見るときの思いが変わります!

 

三:そのロックガーデンでは、5~6月になると「ヒマラヤの青いケシ(メコノプシス)」や「コマクサ」などの美しい花が咲きます。特に「ヒマラヤの青いケシ」は多年草なのですが、日本の高温多湿にはとても弱いので、6月末に入って気温が25℃になる前には掘り上げて、10月くらいまではエアコンのある冷室で管理しています。でも、やはり多年草なので、なんとか掘り上げないで次の年も咲かせることができないかと毎年実験もしているんですよ。環境を考えたうえで株を植えたままにしておいて様子を見るのですが......。今のところ、8月下旬になると跡形もなく消えてしまっていますね......。残念です。

 

編:植物にとって生育環境は大切なのだということが、とてもよくわかりました。いつか、掘り上げずに生き続けた「ヒマラヤの青いケシ」に会えるのが楽しみです!

 

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ヒマラヤの青いケシ(メコノプシス)。西日本で屋外で見られる場所はごくわずか。開花は5~6月ごろ。(写真提供:六甲高山植物園)

 

編:このようにご苦労をされて植栽されている植物もあると思いますが、六甲の自生の草花も多く見られるのですよね?

 

三:はい。ここでは自生を含めて約1,500種の植物が見られます。これからの季節に見られる自生の花では、ショウジョウバカマがきれいで人気も高いですね。自生種には白花もあり、数十年前に六甲山中の良いタイプのものを移植もしているので種類も豊富に見られます。3月下旬から1か月間は咲いていますし、園内のあちらこちらで見られるので、楽しみにしていただきたいです。春は、小さな花が毎日のように咲いてくるので、職員の私たちも毎日、楽しんで園内を巡っています。

 

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ショウジョウバカマ。自生する白花も見られる。(写真提供:六甲高山植物園)

 

六甲高山植物園(ろっこうこうざんしょくぶえん)

住所/兵庫県神戸市灘区六甲山町北六甲4512-150

TEL/078-891-1247

開園/3月18日(土)~11月23日(木・祝)

(3~4月、6月22日~7月13日の木曜日は休園)

入場料/大人(中学生以上) 900円、小人(4歳~小学生) 450円 ※2023年3月18日より

六甲高山植物園【公式サイト】

 

後編では、さらに六甲高山植物園で春~初夏に見られる、おすすめの植物をご紹介いただきます。

▼後編はこちら

 

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三津山咲子(みつやま・さきこ)
六甲高山植物園 学芸員
大学卒業後、六甲高山植物園に広報・営業担当として勤務。現在は植栽管理担当。自生地巡りから栽培のヒントを得ており、植物に関して幅広い知識をもっている。(撮影:河内 彩)

 

『趣味の園芸』2023年3月号(2/21発売)

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3月号では、六甲山高山植物園で出会える美しい花々を紹介しています。

 

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『趣味の園芸』2023年3月号

 

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