山野の美しい花々を咲かせるために...。六甲高山植物園が挑み続ける影の努力と喜びに迫りました〈後編〉趣味の園芸3月号こぼれ話
ウェブサイト「みんなの趣味の園芸」で読める「テキストこぼれ話」。『趣味の園芸』テキストの特集内容に関連して、誌面で紹介しきれなかった情報をお届けします。
今回は、3月号特集内の「六甲で出会う山野の花」で撮影にご協力いただいた六甲高山植物園の学芸員で植栽担当もされている三津山咲子さんが登場。今年で開園90年を迎えるという歴史ある植物園が取り組んでいる植栽の秘密や、これからの季節に見どころとなる花々について伺いました。
前編では、自生地のような環境を保つために工夫されていることなどを伺いました。後編は、六甲高山植物園で春~初夏に見られる、おすすめの植物をご紹介いただきます。
少し早く出会えるミズバショウ
編集部(以下、編):これからの季節に、園内散策で特に楽しみにしたい植物はありますか?
三津山咲子さん(以下:三):湿地エリアのミズバショウは、毎年楽しみにご来園いただく方が多いですね。自生地である群馬県の尾瀬ヶ原では初夏に開花しますが、ここでは、4月上旬から見られますので、少し先取りされたい方がいらっしゃいますよ。また、決して鉢やご自宅の庭で育てられない植物ではないですが、やはり管理が難しいので、ここに来て楽しんでいただけると嬉しいです。
ミズバショウ。六甲高山植物園での開花期は4月上~中旬。(撮影:河内 彩)
編:今、SNSで人気の高いサンカヨウも見られるのですよね?
三:はい、サンカヨウは株数も結構あります。SNSでは「ガラス細工みたい」ということで人気が出ているようで、昨年もサンカヨウの撮影を目当てに来園される方も多くいらっしゃいました。花びらが雨に濡れると透明になるのですが、少しの雨ではダメで一晩中雨に濡れないと透明にはなりにくいようです。サンカヨウは芽吹いたと思ったらすぐに花が咲きます。でも、花が終わるのも一瞬なんです。例えば、今日蕾を見つけても、来週には花もないという感じです。その刹那的な感じもいいのかもしれないですね。
サンカヨウ、開花期は4月。雨に濡れて透き通る花弁状の萼片が美しい。(写真:六甲高山植物園)
90年かけて育んだ山野の花
編:三津山さんが、個人的におすすめの花はありますか?
三:私は、シラネアオイですね。個人的には、日本で一番きれいな花なのではないかと思っています(笑)。花も大きいし、色も繊細で美しいですね。1属1種というのも魅力の一つかもしれません。開花期間が2週間くらいしかないのも、はかなげですよね。
シラネアオイ、開花期は4月中旬。大輪の花で人気も高い。(写真:六甲高山植物園)
編:最後に来園される方へ見どころなどをお願いします。
三:春になると、園内では毎日のように新しい芽吹きや開花を見つけることができます。そして、いわゆるスプリング・エフェメラルのように、春にしか姿を見られない植物に会えるのも楽しみです。基本的には自生地に近い環境に植栽しているのが六甲高山植物園です。なので、より自然に近い形で生きている草花に出会っていただけると思います。90年をかけて育んできた六甲の花々に、ぜひ会いにいらしてください。
バイカオウレン。冬季特別開園3/4(土)・3/5(日)、3/11(土)・3/12(日)で見られる。※冬季特別開園時の入場料は、大人600円・小人300円
(写真提供:六甲高山植物園)
六甲高山植物園(ろっこうこうざんしょくぶえん)
住所/兵庫県神戸市灘区六甲山町北六甲4512-150
TEL/078-891-1247
開園/3月18日(土)~11月23日(木・祝)
(3~4月、6月22日~7月13日の木曜日は休園)
入場料/大人(中学生以上) 900円、小人(4歳~小学生) 450円 ※2023年3月18日より
前編はこちら
三津山咲子(みつやま・さきこ)
六甲高山植物園 学芸員
大学卒業後、六甲高山植物園に広報・営業担当として勤務。現在は植栽管理担当。自生地巡りから栽培のヒントを得ており、植物に関して幅広い知識をもっている。(撮影:河内 彩)
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「テキストこぼれ話」では、『趣味の園芸』テキストの特集に関連して、担当編集者による講師へのインタビューなどをウェブ限定で公開しています(毎月2回更新予定)