キュウリは遅植えが吉! プロに教わるどっさり収穫のコツ【やさいの時間4・5月号こぼれ話】
『やさいの時間』2023年4・5月号では、栽培スタートのタイミングとなる三大夏野菜、トマト・ナス・キュウリをおいしく育てるコツを大特集。キュウリをおいしく育てるプロの技を、キュウリ専門の育種メーカー、ときわ研究場の小田篤さんに教えてもらいました。誌面で紹介しきれなかった内容を取り上げる「こぼれ話」では、どっさり収穫するためのコツを紹介します。
キュウリの植えつけは、地温+最低気温=30℃になってから
編集部(以下、編):キュウリをどっさり収穫するために、大切なことは何ですか?
小田篤さん(以下、小):まず、早植えしないことです。中間地では5月の大型連休のころに苗を植える人が多いと思いますが、待てるなら、もう少しあとに植えることをおすすめします。なぜなら、キュウリは12℃以下では生育が止まるからです。これを「かんざし苗」といい、株のてっぺんに花が咲いてつるが伸びず、株が大きくなりません。低温期は元肥のチッ素分が実に吸収されやすく、苦くなってしまうデメリットもあります。
編:いつごろまで待てばよいですか?
小:1日の平均地温+最低気温=30℃になるころまで、待ちましょう。例年、5月中旬~下旬ですね。そのうえで、植えつけ後は横風を防ぐため、1株ずつ「あんどん」(下写真)で保護するのがおすすめです。
編:なぜ、横風を防いだほうがよいのですか?
小:キュウリは幼苗期に風などの刺激を受けると、自分を守るためにつるの皮を堅くします。すると、つるの繊維に伸縮性がなくなり、成長後、親づるにひびが入って縦に割れてしまうのです。当然、生育が悪くなって収穫量も減ってしまいます。これを防いで、株を健全に育てるために有効です。
夏野菜の植えつけ後、プロの農家が「あんどん」で苗を保護する様子。通気性を確保するため、上部はあいているほうがよい。肥料や堆肥の袋の上下を切って筒状にし、1株ずつ保護する。「あんどんカバー」などとして、専用のフィルムも販売されている。(撮影/内藤貞保)
キュウリは「やぶを作って実をとる」
編:栽培中の管理で、気をつけるポイントはありますか?
小:3つあります。1つ目は、園芸用ネットを張って、つるを誘引しながら育てることです。キュウリの栽培では「やぶを作って実をとる」と言われるくらい、つるを旺盛に茂らせることが大切。園芸用ネットを張ると、つるが伸び伸びと育ちます。
編:あとの2つは、何ですか?
小:2つ目は、追肥をスタートするタイミングです。第1果が大きくなり始めたころから追肥を始めると、株への負担が少なくなって、その後の実つきがよくなります。
3つ目は、若どり収穫することです。キュウリの実は、よく「1日に3cmずつ大きくなる」と言われますが、盛夏には3cm以上大きくなるんですよ。プロの農家は長さ21~22cmの実を出荷しますが、家庭菜園なら18cmくらいでも収穫したほうがよいでしょう。株の負担を減らせるので、長くたくさん収穫できますよ。
(プロフィール)
小田 篤(おだ・あつし)
ときわ研究場副社長
2011年、家業を継ぐために入社。以来、キュウリ一筋。
次回の「こぼれ話」のテーマは、エダマメを予定しています。お楽しみに!〈5月上旬頃公開予定〉
▼これまでのこぼれ話はこちらからお読みいただけます
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