河合伸志さんのWebガーデンツアー!バラ以外にも見どころ満載~中之条ガーデンズ・ローズガーデンに咲く花々【趣味の園芸5月号こぼれ話・前編】
『趣味の園芸』2023年5月号・バラ特集内の「感動を超える美しさ 麗しのローズガーデン」では、河合伸志さんが植栽デザイン・管理指導を務める、中之条ガーデンズ(群馬県吾妻郡)の美しいローズガーデンをご紹介しました。
テキストこぼれ話では、誌面で紹介しきれなかった植栽のポイントや注目の花木・草花など、ローズガーデンの見どころを、河合さんにさらに案内していただきます。Webガーデンツアーを、どうぞお楽しみください。
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河合伸志(以下、河):中之条ガーデンズのローズガーデンは、コンセプトの異なる7つのガーデンが連なる構成になっています。まずはバラとさまざまな花木・草花の競演を楽しめるアプローチがあり、和モダン、ガーランドの庭、イエローガーデン、ホワイトガーデン、アンティークな色調の庭、香りの庭が続きます。アプローチから順に、ご案内しましょう。
エリアごとに面積を比べると、一番広いのがアプローチです。バラのほかにも、さまざまな花木や草花を植えています。特に春の花木は見ごたえがあり、その存在感はバラにも負けません。
オルラヤの白い花が可憐。左は赤みの強いブロンズ色の葉が特徴的なアメリカテマリシモツケ'リトル・エンジェル'。
上から枝垂れているのはサクラ'八重紅枝垂'。
早咲きのユリ'マニフィーク'は、冷涼な中之条では6月ごろに見ごろを迎える。「横浜での開花は5月で、やはりバラと同じ時期に咲いていました。」
バラ'ピンク・ベルズ'のウィーピング・スタンダード。枝がしなやかな品種のなかから、このコーナーの色調に合うバラを選んだそう。
河:続いて、和モダンの庭。「和風の庭を手がけてみたい」という私のリクエストを受けて、中之条ガーデンズ全体のランドスケープデザイナーを務めた吉谷博光さんがさまざまな仕掛けを考えてくれました。
植栽で意識したのは「引き算」です。着物に見立てた緋赤のバラ(5月号p,34~35参照)も、「間」の美しさを表現するためにあえて花の数を絞っています。開花中も、花数が多すぎると感じたら減らしていきます。テキストの写真の状態なら、もう少し減らしてもよいかもしれません。
奥に見えるのが5月号p,34~35の植栽。中央の庭石や左右の黒い壁、壁沿いの植物(アオキ、ヤツデ、クジャクシダなど)にも和の風情が漂う。頭上を覆うのはバラ'伸'。「花枝がしなやかな品種で、垂れ下がるので、開花期には藤棚ならぬバラ棚になります。」
大きめの樹木から比較的小さな草花まで、さまざまな植物が植えられていたアプローチとはうって変わって、和モダンの庭は草丈・樹高が低めの植物が中心。白、黒の壁のシンプルさも相まって、「間」が際立つ。
河:次はガーランドの庭です。お客様にも特に人気のエリアで、テキストでも多くページを割きました(5月号p,32~33)。ガーランドには、枝がしなやかで伸びた枝にまんべんなく花を咲かせ、花枝の短い品種が向きます。いわゆる、「つるバラとして優秀」な品種ですね。このような品種を選べば、ロープのラインが美しく現れます。加えて、ガーランドの大きさに見合う品種を選ぶことも大切です。さもないと、いつまでたっても構造物を覆うことができません。
今も使用している品種だと'ペレニアル・ブラッシュ'は、花つきと花枝の短さは申し分ないのですが、枝が硬くて誘引に苦労しています。花が咲くとスパイス香が周囲に漂う、春以外も返り咲き、秋には小さなローズ・ヒップが実るなど、よい面もありますが。
また、誘引においては、枝の向きをなるべく活かすようにしています。そのほうが無理なくロープの形状を整えられるからです。このように気をつけてはいるのですが、誘引が終わると枝に引っ張られてロープの形状がくずれてしまうことがあります。そんなときは重しをぶら下げて矯正し、花が咲くころにラインが整ったら重しを外しています。
......というように、テキストでお伝えした剪定のほかにも、ガーランドはいろいろと手間がかかります。その分、きれいに咲いたときの美しさは格別です。
ピンク系の色合いの愛らしいバラが画角を埋めつくす。
ガーランドの柱と同調させるため、ガーランドの周囲には横に広がらず、まっすぐ上に伸びるファスティギアータ(箒性)タイプの樹木を選んでいる。
特に人気の高いこのエリア。当初はすべて芝生を引いていたが、入園者数の増加に伴って芝生の維持が難しくなり、現在の形に。
(撮影:桜野良充)
後編に続きます!
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中之条ガーデンズ 群馬県吾妻郡中之条町大字折田2411
河合伸志(かわい・たかし)
全国各地の庭園のプランニングや管理指導などを行う。バラだけでなく、あらゆる植物に精通し、多種多様な植物を組み合わせた混植の庭を得意とする。
(撮影:田中雅也)
『趣味の園芸』2023年5月号
バラを楽しみつくす大特集をお届け。厳選品種50、はじめてでも安心の育て方、印象的な庭をつくるコツ、原種と育種の深い歴史...ありとあらゆる角度からバラの「楽しみ」を詰め込みました。注目特集は四季咲きクレマチス。稲垣吾郎さんの「グリーンサム」第2回も。
「感動を超える美しさ 麗しのローズガーデン」は、テキスト5月号でお読みいただけます。
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『趣味の園芸』編集部によるテキストこぼれ話。最新号の特集や記事に関連して、誌面で紹介しきれなかった情報をお届けします。【毎月2回公開予定】