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「ふやす」は園芸の醍醐味。『12か月栽培ナビDo 花苗をふやす』著者インタビュー

「ふやす」は園芸の醍醐味。『12か月栽培ナビDo 花苗をふやす』著者インタビュー
(撮影:田中雅也)

花を育てることが大好きなみなさんが待ちかねた1冊が誕生しました。『12か月栽培ナビDo 花苗をふやす タネまき・さし木・株分け』は、苗をふやす、苗をつくる、株を分けるなど、園芸作業の最も大切で楽しい作業を紹介した本です。そこで著者で園芸研究家の島田有紀子さんに、ふやし方の勘どころをお聞きしました。

 

―花苗を購入して植えつけるという人も多いようですが、島田さんはタネまきが大好きだとか。そのおもしろさはどんな点にあるのでしょうか?

タネをまいて、ちゃんと芽が出るかなというドキドキと、子葉が開くときのワクワクがたまりません。頼りなげな苗が本葉を広げ、ぐんぐん育ち、やがて花が咲く。植物の一生はタネで始まり、タネで終わる。どんな植物でもタネから育てられます。育てる時間、開花までの時間、花咲くときの感動......。これぞ、園芸の醍醐味です。花苗を購入してからの栽培に比べ、何倍も楽しみ、喜びが大きいのです。いつもは苗を購入するという人にも、ぜひ、タネまきに挑戦してほしいですね。まきどきを間違えず、タネの大きさによってまき方を変えるなど、ちょっとしたコツを覚えれば、苗づくりは簡単ですよ。

また、大きく育つ植物は、苗ではあまり出回らないことが多いので、そんなときこそタネから育ててください。私は、大きく育つ植物が大好きで、5〜6mに育つロシアタイプヒマワリやデルフィニウム、ジギタリスといった植物をよくタネから育てました。大きな植物はインパクトがあり、花壇でよく目立つのでご近所で評判になるかもしれませんよ。

 

―さし木も不思議がいっぱいですよね。根も葉もないところから、根が出て、芽が出て、親と同じ植物が育つなんて!

植物は、動物と違って、自らの体の一部で簡単にクローンがつくれるすごい再生力をもっています。この再生する力を生かして、さし木が行われます。専門的には栄養繁殖といいますが、これも不思議ですよね。親株とまったく同じものが簡単にできてしまう。根や芽が出るわけは、植物ホルモンの関与などちょっと難しいのですが、まずは大好きな植物をもう1株欲しい、と思ったらさし木に挑戦してみてください。成功したときのうれしさは格別です。

慣れたらひと工夫して、1鉢に数本をさし木し、成長に合わせて鉢を大きくしていくと、半年後には見ごたえのある大株仕立てになりますよ。これも園芸の大きな楽しみの一つです。あなたはさし木にハマってしまい、夢中になるかもしれません。幼いころの夢の時間がよみがえるのではないでしょうか。

 

―株をふやしたい、と思ったら宿根草は株分けが一般的です。コツや注意点はありますか?

株分けは、単に株をふやすためだけに行うものではないんですよ。植物は同じ場所に何年も植えたままにしたり、鉢植えで何年も植え替えなかったりすると、衰えてきます。庭の一角で元気がない株を放置するといつのまにか消えてしまうこともあります。クリスマスローズなどで経験している人も多いのではないでしょうか。株分けは、ふやす目的以外にも植物を元気に育てる大切な管理作業なのです。

植物は若ければ若いほど、生育が旺盛です。株分け苗よりもさし木苗、さし木苗よりもタネから育つ苗のほうが元気です。ただし、タネから更新する場合は親株と同じ個体にならないことも多く、開花までには時間がかかります。株分けを行えば、弱り始めた株が元気を取り戻し、翌年も花が楽しめます。宿根草や多年生の鉢花などは数年に1回、定期的に株分けをしてほしいですね。コツは、適期に行うこと、細かく分けすぎないことです。株分けは日ごろ、花を咲かせて私たちの時間を豊かにしてくれる植物たちへの、最低限のお礼の作業と考えてみてはいかがでしょう。

 

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島田有紀子(しまだ・ゆきこ)

園芸研究家。2023年3月まで広島市植物公園勤務。変わり葉ゼラニウム研究の第一人者。ペラルゴニウムやベゴニアなどのほか、草花栽培の名人。本誌でもさまざまな植物の楽しみ方や栽培技術を紹介してきた。なかでもタネまきやさし木、株分けなど、植物のふやし方の技術と知識には定評がある。

(撮影:田中雅也)

 

*本インタビューは『趣味の園芸』2023年6月号に収載された記事を再構成したものです。

 

『NHK趣味の園芸 12か月栽培ナビDo 花苗をふやす タネまき・さし木・株分け』

 

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