【第5回】水やりのお悩み~番組で紹介しきれなかったQ&Aを公開!〈稲垣吾郎 グリーンサムへの12か月〉
稲垣吾郎さんが華麗なる園芸名人(グリーンサム)を目指す、趣味の園芸「稲垣吾郎 グリーンサムへの12か月」(2023年4月から毎月1回放送中)。講師陣が力をあわせ、1年がかりで、吾郎さんのグリーンサムへの道のりをお手伝いします。
番組内のお悩みコーナーでは、視聴者のみなさんからお寄せいただいたお悩みにお答えしています。今回は、8月6日に放送された第5回目のテーマ「水やりで失敗しない!」から、番組では取り上げられなかったQ&Aを紹介。8月のグリーンサム講師の奥隆善さんが、3つのお悩みにズバリ回答します!
【お悩み1】夏に腰水をしていますが、受け皿の水が熱くなって根が傷まないか心配
小さい鉢は水切れしやすいので夏場に受け皿に水を張るのですが、年々気温が上昇しており、水が温まってかえって根に悪いだろうか...?と悩みます。(広島県/西原直子さん)
*腰水...植木鉢の底面を水に浸す給水方法のこと。底面給水とも。
【奥隆善さんの回答】
夏の強い日ざしが当たると、戸外のホースの中の水は熱湯になって危険すら感じますね。同様に受け皿の水も高温になると思われるかもしれませんが、実際には気化熱などにより熱が奪われて、それほど熱くはなりません。しかし、ぬるめのお風呂程度には温度が上がりますし、加えて黒い鉢は白い鉢に比べて温まりやすいと思われます。
夏に元気に育つ植物の根は、ぬるめのお風呂程度の温度で傷むことはあまり考えがたいと思います。しかし、気化熱の発生しにくいプラスチック鉢や釉薬(ゆうやく)が全面にかかった陶器の鉢では、鉢の側面に強光が当たると高温になり、根が傷むことにつながります。また、そのような鉢内は酸欠になり、それも根の傷みにつながります。
そのため、受け皿に水を張るなら、白い鉢か素焼き鉢に植えましょう。または用土の下に入れる鉢底石を、受け皿の水位より高い位置になるように厚く敷くことをおすすめします。
夏に腰水をするなら素焼き鉢(左)か白いプラスチック鉢(右)がおすすめ。(撮影/田中雅也、福田稔)
黒いプラスチック鉢(左)や釉薬がかかった鉢(右)は鉢内が温まりやすい。(撮影/NP、田中雅也)
【お悩み2】多肉植物の土の乾き具合がわかりにくい
アデニウム「砂漠のバラ」を育てています。多肉植物は通常、土がしっかり乾いたら水をたっぷりあげると聞きますが、土が乾いているのかどうかがわかりにくいです。どうすればよいでしょうか?(福岡県/あなちゃんさん)
「砂漠のバラ」と呼ばれるアデニウム・オベスム。(多肉植物・サボテン図鑑より)
【奥隆善さんの回答】
着生ランや多肉植物、サボテンなど乾燥に強く根腐れしやすい植物では、しっかり乾いてからの水やりが薦められていますが、大多数の植物は極端に根を、特に高温時に乾かすと傷んでしまい、成長が悪くなります。そのため、水はけのよい土を使い、乾燥させすぎないように、水は早めに与えるのが水やりの基本的な考えだと思います。
近年、培養土に多用されているピートモス、バーミキュライト、パーライト、軽石は乾いても色の見分けが難しいので、乾いて白くなった状態を目視しやすい赤玉土を、少量でよいので(10%程度)混ぜるのもよいでしょう。
【お悩み3】旅行中の水やりは?
旅行中の水やりに悩んでいます。鉢植えが多いのでご近所や兄弟に頼んでいますが、よいアイデアがあれば教えてください。マンションのバルコニーで栽培しています。(兵庫県/みみずくさん)
【奥隆善さんの回答】
「人に頼る」ことが最もすばらしい選択肢だと思います。日ごろから人間関係を築かれているからこそ水やりを頼めるので、みみずくさんは園芸家の鑑(かがみ)だと思います。
しかし、どんな園芸家であっても他人の植物の管理を急に託されると、水やりの程度に迷うものです。その結果、旅行から帰ると調子が悪くなる植物が出てきてしまうこともあります。『趣味の園芸』2023年8月号79ページで紹介したように、浅い容器にポリエステルなどのマットを敷き、一部を下に垂らして排水するシステムをつくり、多めの水やりをお願いするのはいかがでしょうか? このシステムなら、水やりによる湿りすぎや乾きすぎを防止できます。
葉からの蒸散を抑えて水切れしにくくするために、旅行前に剪定しておくとか、日陰に移すとかいった方法も一案ですし、日陰なら受け皿に水を貯めても根傷みの危険が少なくなります。
浅い容器にポリエステル100%など化学繊維のマットを敷き、片側を垂らす。その上に防草シートを敷く。鉢を並べる前に防草シートがひたひたになるまで水をためて、全体を湿らせておいてから鉢を並べて以後、普通に水やりの管理をする。排水を促すために垂らしたマットの部分にも、忘れずに毎回水をかける。(撮影/田中雅也)
奥 隆善(おく・たかよし) 園芸研究家
千葉大学大学院自然科学研究科博士前期課程を修了後、故郷の三重県伊賀市で草花や野菜の品種改良、生産、販売を行う。世界で初めてチョコレートコスモスの品種改良に成功した育種家としても知られる。
編集/小葉竹由美 協力/NHKエデュケーショナル
▼「水やりで失敗しない!」は、テキスト8月号(p.74~)に掲載されています
「稲垣吾郎 グリーンサムへの12か月」お悩みコーナー
◎アーカイブ
・放送内で紹介されたお悩みと回答は、NHK趣味の園芸 番組ホームページ >「グリーンサム Q&A」からご覧いただけます。
・放送で紹介されなかったお悩みと回答は、「みんなの趣味の園芸」> 趣味の園芸 みんなの広場「グリーンサムへの12か月 番外編」からご覧いただけます。
◎お悩み募集
番組ホームページでは随時、お悩みアンケートを実施しています。あなたのお悩みが、番組やテキスト、「みんなの趣味の園芸」で紹介されるかもしれません。アンケートは、「趣味の園芸」番組ホームページからご回答いただけます。お悩みをぜひお寄せください!
上記ページの「概要」→「お知らせ」欄からご確認ください。
※「みんなの趣味の園芸」のアンケート募集ではありません。
※番組ホームページは、「みんなの趣味の園芸」サイトとは異なります。
※アンケートに関するお問い合わせは、番組のお問い合わせ窓口よりご連絡ください。
「稲垣吾郎 グリーンサムへの12か月」放送予定&最新テキスト
「稲垣吾郎グリーンサムへの12か月」は、毎月1回放送中! 次回の放送テーマは・・・
▼放送予定
「趣味の園芸」稲垣吾郎 グリーンサムへの12か月 ⑦強いバラを育てる
放送 10月15日(日)午前8:30~8:55 Eテレ
再放送 10月18日(水)午後1:05~1:30 Eテレ
※特別番組などにより、放送が変更・休止になる場合があります
▼「強いバラを育てる」は、テキスト10月号(p.82~)に掲載されています
番組やテキストの最新情報を紹介!「趣味の園芸 みんなの広場」