グラス類が主役!「プレーリーナチュラル」な庭づくりのヒント【趣味の園芸10月号こぼれ話・後編】
『趣味の園芸』2023年10月号の特集内「花で彩るナチュラリスティック・ガーデン」では、ガーデンデザイナーの大滝暢子さんが、市民とともに管理に関わる東京臨海広域防災公園を参考に、自宅でナチュラリスティック・ガーデンのエッセンスを取り入れるコツを教えてくれました。
テキストでは公園内の「シックナチュラルエリア」「さわやかナチュラルエリア」を紹介しましたが、園内には、さらに素敵なエリアがあるのです。誌面で紹介できなかった残りのエリアを大公開!
前編では「カジュアルナチュラルエリア」の植栽を紹介しましたが、後編では、公園内でももっとも奥にある「プレーリーナチュラルエリア」について大滝さんに教えていただきます。
グラス類が主役!のプレーリーナチュラルエリア
編集部(以下、編):前編では、「カジュアルナチュラルエリア」の植栽についてお話を伺いました。後編ではもうひとつの「プレーリーナチュラルエリア」について教えてください。
大滝さん(以下、大):東京臨海広域防災公園では、大きく分けて2か所でガーデン作りをしています。これまでに紹介した「シック」「さわやか」「カジュアル」は公園の正面口からほど近い場所にある「オアシスガーデン」の中にあります。主に花を中心としたガーデンになっています。その場所からさらに、奥に行くとグラス類を多く使用した「ブリーズガーデン」があり、その中に「プレーリーナチュラルエリア」があるんです。
編:「プレーリーナチュラルエリア」はどんなイメージなのですか?
大:一言でいうと草原的なイメージですね。野の花を連想させるようにランダムに宿根草を植栽しています。グラスの中からニョキっと出る花たちがナチュラル感を出してくれるように考えています。グラス類が主役ですが、その中でも季節ごとの花が美しい色合いを見せてくれます。
プレーリーナチュラルエリアの春の風景。スティパの中からのぞくアリウムがかわいらしく、ふわふわとした質感がとても魅力的。(写真提供/大滝暢子)
初夏。アリウムの花は終わったが、シードヘッドとしてあえて残している。この風景が見られるのがナチュラリスティック・ガーデンの醍醐味。(写真提供/大滝暢子)
こちらも初夏の風景。ふわふわのスティパと、緑のカラマグロスティスといったグラス類の間から、バーベナやエキナセアといった背の高い花がかわいい顔をのぞかせている。(写真提供/大滝暢子)
夏のプレーリーナチュラルエリア。フロックス、オミナエシ、エキナセア、ダウクス・カロタなどが咲き誇る。(写真提供/大滝暢子)
編:グラスからちょこんと顔を出している花がとてもかわいいですね。
大:そうですね。プレーリーナチュラルエリアは、すこし広めの敷地で奥行きがあるので、グラスが醸し出す、より自然に近いテイストを意識しています。
市民とともに作り上げるガーデン
編:東京臨海広域防災公園のガーデンは、市民の方も管理に関わっているのですよね?
大:はい。私が講師を務めさせていただいている「四季を感じるナチュラリスティックなガーデニング講座」に参加されている方たちと一緒に作り上げています。みなさん、とても熱心で丁寧に作業してくださっています。
市民のみなさんと共に植栽の管理をしている大滝さん。にこやかな雰囲気で楽しそうです。(撮影/編集部)
編:みなさんには、講座でどのようなことを伝えられているのですか?
大:ガーデニングの基礎をはじめ、ナチュラリスティック・ガーデンは宿根草の庭とどこが違うのか?という話もします。それは、正直少し難しい部分もあります。
編:そうですね、少し難しいところかもしれません。
大:ナチュラリスティック・ガーデンは、グラスや宿根草をただ植えているわけではなく、春の芽出しから秋の色落ち・枯れ姿まで植物のライフサイクルや四季を通じた色彩の変化を楽しみ、ナチュラルな風景として観賞することを考えて作っています。また都会の厳しい暑さに耐えること、オーガニックな管理も求められます。庭に訪れる昆虫に出会えるのも魅力の一つですね。宿根草は植え替えも少なくてすみますし、人にも環境にもやさしく、サステナブルな植栽方法なので、これからの時代にあったガーデンだと思っています。そんなことも、お話ししています。
編:人にも環境にもやさしくて、美しい花も楽しめるナチュラリスティック・ガーデンは、今後ますます注目が高まりますね! まずは、東京臨海広域防災公園にうかがって四季の風景を楽しみたいと思います。
大:はい。常に進化させながらガーデン作りをしていますので、きっと楽しんでいただけると思います。ぜひ見にいらしてください。
秋の東京臨海広域防災公園のナチュラリスティック・ガーデンの風景。(写真提供/大滝暢子)
晩秋の風景。シードヘッドも枯れ姿も美しい。(写真提供/大滝暢子)
取材協力/東京臨海広域防災公園(東京都江東区有明3丁目8番35号)
東京臨海広域防災公園の広い園地では、様々な季節の植物や、大滝さんがコミュニティガーデナーの皆さんとともに管理をしている花壇などが楽しめます。都会のナチュラリスティック・ガーデンを見に出かけてみては。
▼前編から読む
(撮影/岡部留美)
大滝暢子(おおたき・のぶこ)
恵泉女学園で園芸学を修得したのち、イギリスでガーデンデザインを学ぶ。庭の設計や植栽のほか、コミュニティガーデン事業にも関わる。JAG理事。
大滝さんのインスタグラム Nobuko Otaki(@gardenstudio_kodemari)
『趣味の園芸』2023年10月号
今世界的に注目を集めている"ナチュラリスティック・ガーデン"を、趣味の園芸テキストとして初特集。この新しい植栽手法の魅力や庭への取り入れ方、おすすめの植物まで、一年を通して「輝く庭」の秘密を徹底解剖します。注目特集はラベンダー。暖地でもうまくいくヒケツを伝授。稲垣吾郎さんの「グリーンサム」第7回のテーマはバラ。
「花で彩るナチュラリスティック・ガーデン」では、ナチュラリスティックなエッセンスを取り入れながら、コンパクトな庭でも、花も楽しむための2つのプランを大滝さんが提案してくれました。『趣味の園芸』10月号でお読みいただけます。
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