今、地方野菜・在来作物が面白い

今、地方野菜・在来作物が面白い

1.なぜ今、地方野菜なのか?

だだちゃ豆と京野菜

 季節はずれの話題で恐縮ですが、夏のビールのお供に欠かせないエダマメの王者と言えば? そう、「だだちゃ豆」ですね。ご存じの方も多いと思いますが、山形県鶴岡市で作られるエダマメの品種で、その香ばしい風味と強い甘みで今や全国的に超有名です。でも、どれだけ有名であろうが、これは山形県の一地域だけで作られる品種です。
 話は変わり、京都の錦市場。細い路地の両側に生麩や漬物、包丁の老舗までがずらりと並び、眺めて歩くだけでも楽しい場所です。そしてもちろん、何軒かある青果店には、京都にしかない珍しい野菜がずらりとそろっています。聖護院(しょうごいん)ダイコン、鹿ケ谷(ししがたに)カボチャ、エビイモなど、その数30種以上。これらは古くから京都府内で作られてきた野菜の品種で、京都に根づいた野菜ということで「京野菜」と呼ばれることもあります。
エダマメの王者「だだちゃ豆」
エダマメの王者「だだちゃ豆」
太った形が特徴的な京野菜「聖護院ダイコン」
太った形が特徴的な京野菜「聖護院ダイコン」

地方野菜とF1品種

 このように、伝統的にその土地で作られてきた野菜を「地方野菜」とか「在来作物」、あるいは「伝統野菜」などと言います。じつは、高度経済成長期以前の日本ではどの地方でも、おおむねその土地でとれる野菜ばかりを食べていました。乱暴な言い方をすれば、かつて野菜には「地方野菜」しかなかったのです。
 ところが高度経済成長期以降、農家が育てる野菜の多くがF1(エフワン)品種と呼ばれる種類に変わりました。F1品種は病気や害虫に強く収穫量も多いなど、優れた点がたくさんあるからです。大半の農家が失敗のリスクを避けるためにF1品種を導入し、その結果、今では日本全国どこでも同じようなキュウリ、同じようなダイコン、同じようなアレやコレが作られています。F1品種の普及により、野菜が全国に安定的に供給されるようになりましたが、気候風土と切り離された匿名性の高い野菜が市場を席巻するようにもなりました。その結果、在来作物を育てる農家が次々に姿を消し、これらの野菜の運命は今、風前の灯といっても過言ではない状況に陥っています。
岐阜県飛騨地方を中心に栽培されている伝統野菜「飛騨紅カブ」
岐阜県飛騨地方を中心に栽培されている伝統野菜「飛騨紅カブ」

個性派の復権?

 ただ、こうした状況を前にして、消えゆく野菜を惜しむ声が上がり始めました。専門家だけでなく、地元のお年寄りたちの間からも「あのキュウリは育てにくいけど、味は抜群だった」とか「同じダイコンでも、昔作っていたのは品種ごとに辛みや肉質が違って面白かった」などという指摘が聞かれるようになっています。実際、在来作物のなかには病気や害虫に弱くて育てにくいけど抜群においしい品種とか、大きすぎて流通に向かないけど食感がいい品種などがあり、その多様性が魅力です。家庭菜園ブームの高まりとともに、個性あふれる在来作物に注目が集まり始めています。
山形県庄内地方で栽培されている「外内島キュウリ」
山形県庄内地方で栽培されている「外内島キュウリ」
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映画公開情報

山形国際ドキュメンタリー映画祭2011正式出品
香港国際映画祭2012正式出品
映画「よみがえりのレシピ」(渡辺智史監督作品)

おいしくて、そして心に効くドキュメンタリー映画

在来作物と種を守り継ぐ人々の物語です。


映画「よみがえりのレシピ」製作委員会公式HP
http://www.y-recipe.net/

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NHK趣味の園芸 『やさいの時間』11月号
映画「よみがえりのレシピ」渡辺智史監督インタビュー掲載!

山形県鶴岡市生まれ。東北芸術工科大学を経て、映画制作会社で複数のドキュメンタリー映画の制作に携わった渡辺監督が語る「この映画を撮ったわけ」。作品誕生のきっかけから生産者の素顔、おすすめの庄内野菜まで縦横無尽に語ってくれました。
『やさいの時間』テキストページはこちら
渡辺智史監督

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