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NHK文化センター特別講座

腸から考えるストレスと睡眠

3月15日、NHK文化センターのオンライン特別講座
「腸から考えるストレスと睡眠」が開催されました。
講師は心身医学が専門の須藤信行先生。
脳腸相関をテーマにご講演いただきました。
講演内容と視聴者からの質問をご紹介します。

須藤信行先生

須藤信行 先生

九州大学大学院医学研究院心身医学教授。ストレスが疾病の原因となるメカニズムに関する代表的研究者。腸内細菌が脳腸相関に関わる現象の研究に携わる。

Check!

講座の本編はこちら

精神疾患やアレルギーとも
関係している腸内細菌

細菌は体の皮膚、口腔内、消化管などにすんでいますが、最も多いのは消化管、なかでも大腸です。大腸にすむ腸内細菌の数は、体の細胞をすべて合わせた数より多く、100兆個ともいわれています。

かつて腸内細菌の研究は非常に大変な作業が必要でした。しかし、分子生物学という学問を取り入れることによって、今では一人の人にどのような細菌がどれだけすんでいるかということも速やかに解析できるようになっています。

さらには、腸内細菌が腸の病気だけでなく、肥満やアレルギー、精神疾患や神経疾患とも関わりがあることがわかっています。

腸内細菌が変わると
ストレス反応も変わる

そうしたなかでも注目されるのが脳腸相関という考えです。脳腸相関とは、脳と腸が神経や血液のなかに含まれる物質によって双方向で情報を交換していることをいいます。

実は、この脳腸相関には腸内細菌が密接に関わっていることが明らかになりました。ストレスがかかるとビフィズス菌やラクトバチルスなどの有用菌が減り、一般的に有害菌とされている大腸菌群やバクテロイデス属が増加する傾向にあることは古くから知られていました。

今では逆に、腸内細菌のバランスが変わるとストレスに対する反応性が変わることがわかってきています。

腸内細菌を持たない無菌マウス、腸内細菌を持った一般的なマウス、1種類だけ腸内細菌を持った単一菌マウスで実験をしたところ、ストレスを無菌マウスと一般的なマウスに与えると、無菌マウスは一般的なマウスに比べ過敏に反応しました。単一菌マウスでは、その菌を有用菌や有害菌に変えて実験しました。するとビフィズス菌だけを持つマウスのストレス反応は一般的なマウスと変わらないのに対し、バクテロイデスだけを持つマウスは無菌マウスと同程度の反応を示しました。このように、腸内細菌を変えるとストレスに対する応答性が変わるのです。

ストレス反応が違うなら、行動も変わるのではないか。調べてみると、無菌マウスは多動でしたが、有用菌を移植すると一般的マウスと同じレベルになりました。

Point!

腸内細胞の役割

  • 物質代謝の調節
    (胆汁代謝、コレステロール代謝など)
  • エネルギーの産生
  • 蠕動運動・消化吸収の促進
  • 病原体からの感染防御
  • 免疫機能の恒常性維持に関わる

最近では、新たな生理作用やさまざまな疾患(肥満、アレルギー、炎症性腸疾患、精神疾患など)との関係が注目されている。

乳酸菌による
ストレス抑制効果にも期待

こうした作用に関わっている物質は短鎖脂肪酸です。短鎖脂肪酸は、腸内細胞が食物繊維やオリゴ糖を分解することによって作られます。短鎖脂肪酸は脳で非常に重要な役割を果たすミクログリアという細胞に作用して、脳の中枢に影響を与えます。

また、アミノ酸の一種であるトリプトファンを腸内細菌が分解した物質は、脳の細胞に影響を及ぼすことがわかっています。このように、腸内細菌はダイレクトに脳に刺激を伝えるルートを持っているのです。

腸内細菌が人のストレスにも影響を与えるという実験を紹介しましょう。医学部の学生140人を2つに分け、進級試験の前後に片方にはある特定の乳酸菌を含んだ飲料、片方には乳酸菌を含まない飲料を飲んでもらいました。すると、乳酸菌を飲んでいた群はとっていない群に比べ試験のストレスによる体調不良の頻度が低く、唾液中のコルチゾール(ストレスホルモン)の上昇が抑制されました。

今後は、腸内細菌を使ってメンタルヘルスを改善しようという研究も進んでいくでしょう。

Q&A ここが知りたい!

脳と腸の不思議な関係

  • 日常の食事で、どのような食品をとれば腸内細菌を整えることができるのでしょうか。
    健康維持に欠かせない短鎖脂肪酸は、食物繊維を餌にして腸内細菌が分解して作ります。短鎖脂肪酸を作るには食物繊維の多い伝統的な日本食や、味噌、ぬか漬け、納豆などの発酵食品がおすすめです。
  • 腸内環境が整えば精神的な安定も期待できますか?
    うつ病やうつ状態が、なんらかの腸内細菌によって改善するかどうかについては、今、多くの国で研究が進められています。この結果が出るのは、もう少し先になるでしょう。
    しかし、腸から脳に向かう神経経路があり、それが腸の内部で起こっていることを感知して、脳の快感を感じる神経回路につながっていることがわかりつつあります。将来は、腸管のある種の状況が気分をコントロールしている、などということがわかってくるかもしれません。
  • 腸内環境の改善について、例えばファスティングなどで一度腸内をリセットしてからのほうが改善しやすいのでしょうか。また、食べると良い食材などありますでしょうか。
    ファスティング(断食)がどのように腸内環境に影響を与えるか、詳しいことは分かりませんが、腸内環境面から考慮したほうが良いと思われることに、食物繊維の摂取量不足があげられます。断食で食物繊維が不足すると、それをエサとして利用する腸内の有用菌が影響を受け、良くない方向に腸内環境が変化する可能性も考えられます。
    腸内環境を改善するうえで摂取するとよい食材としては、食物繊維を豊富に含む食材があげられます。
  • 腸がどうして睡眠に関係するのでしょうか。
    また、質のいい睡眠とはどんなことをいうのでしょうか。
    睡眠が腸の機能に影響を与えることは古くから知られています。例えば睡眠時間が不規則な人たちに、消化管症状を訴える頻度が高いことなどがあげられます。一方、講演でも述べたように、研究の進展により「腸」は「脳」に影響を及ぼす器官であることが分かり(脳腸相関)、そこには腸内細菌も関わることが明らかになりました。このような背景から、乳酸菌のストレス緩和作用についてある研究が行われました。ある種の乳酸菌を用いた対人試験で、精神的ストレス状況下の過剰なストレス応答が抑えられること、同じ状況下にある被験者の睡眠の質を改善することがわかりました。
    対人試験では、「睡眠の質」の指標として、ノンレム睡眠(ぐっすりとした眠り)の時間と、眠りについて最初に訪れる深い睡眠時に特徴的に表れる脳波(デルタ波)の量が調べられました。
  • 腸内環境が良いか悪いか、一般人が日常的に判断する指標や方法はありますか。
    また、自分にあった菌を調べるにはどのようにしたら良いでしょうか。
    お通じの状態は、腸内環境を映す鏡のようなものです。お通じの量や形などを観察されるとよいでしょう。またご自身に合う菌については、続けて摂取することでおなかの調子がよいなど実感できるものを選ばれるとよいでしょう。
  • ホルモンバランスと腸内フローラって関係あるのでしょうか。
    腸は、神経系、内分泌系、免疫系のように体の機能維持に重要な仕組みを司る器官です。その腸に存在する細菌は、菌体成分や代謝産物がこれらの機能に影響をおよぼすと考えられます。
  • 乳酸菌などの菌はいつ取ったら効果的ですか?毎日がよいですか。
    乳酸菌の多くは、食品で手軽に摂取すること可能です。いつ飲んでも構いません。ご自身が続けやすいタイミングで継続して摂るとよいと考えます。
画像:オンライン講座の様子

約1時間のオンライン講座を開催しました。
司会進行は元NHKアナウンサーの好本恵さん。