※自生地(利尻山)での花期は7~8月
【栽培環境】
南向きマンション中層階ベランダ。屋根が霜よけになり、秋~春は直射日光が朝8時過ぎから午後3時頃まで当たります。
ベランダには金属の格子を取り付け、そこにリシリヒナゲシのハンギング鉢をかけています。自生地を意識して寒風には吹き晒しで風通し抜群。
ただし後述の種まき時は室内で。また幼苗期と春5月以降は午後の強い西日が当たらない半日陰で管理しました。10月~4月は午後もよく日の当たる場所です。
【水やり】
土の乾き具合と天候を見ながら毎日または1~2日おきに1回、鉢底から水が流れ出るくらいたっぷり、が基本。用土が山野草用の軽石主体で水はけが大変よく乾きやすいので、空気が乾燥しがちな秋冬は『ちょっと多いかな?』と思う程度に水やりしています。
【肥料】
播種時の元肥はなし。本葉が2~3枚の頃から緩効性の粒状化成肥料(「マイガーデン植物全般用」 [N:P:K:Mg = 11:11:7:0.5])を鉢のへりに沿って2~3ヶ月に1回、規定量を置肥。さらに通常より薄い液肥(ハイポネックス微粉の2000倍液)を週に1~2回、水やりがわりに。
【病気と害虫】
今のところ特になし。予防の散布もしていません。
【用土と鉢】
市販の“東洋蘭の土”(軽石主体で“山野草の土”よりも粒がやや大きい)を鉢の八分目まで入れ、さらに同じ土を目の細かいふるいでふるった細粒のほうを表土部分に厚さ1~2cmしいて、そこへタネをまきます(直まきのためタネが流されないように)。鉢はプラスチックの4号鉢または壁掛け用の5号鉢を使用。素焼き鉢やヤシマットタイプだと乾燥しすぎる恐れがあり避けます。
(※)リシリヒナゲシの自生地は、利尻山(標高1,721m)の山頂付近でゴツゴツした岩が多い砂礫地。なので普通の山野草の土よりも荒めにしています。でも現地では山のふもとにあるホテルや民家の庭先にも植えて咲かせているそうです。
【主な作業】
・種まき
1年草扱いで夏越しさせずに花を咲かせるには、秋口に早くタネをまいて冬までに株を大きくしておくことがポイントのようです。しかし9月上旬まきだと関西ではまだ残暑が厳しく連日30℃以上となる時期で、発芽適温ではありません(ケシ類の発芽適温は一般的に15~20℃)。
そこでパンジーやビオラのタネを早まきするときの要領で、室内で保冷剤とクーラーボックスを使って播種から発芽まで15~20℃を保つようにします。ただ手間がかかるため、今回は化粧品用の小型電動クーラーボックス(通販で2~3千円程度)を使用しました。いちおう自動で温度調整してくれます。
タネはバラまきで覆土なし。発芽までの水やりは霧吹きで行います。発芽後はただちに外へ出し、午前中のみ日が当たり午後は日陰となる風通しの良い涼しい半日陰へ移動しました。10月以降はよく日の当たる場所へ。
・間引き
双葉が開いた頃に1cm間隔となるよう間引き。その後、本葉が開いて葉が触れあう程度になるたびに間引いて、最終的に4~5号鉢に1株、7号鉢に3~4株とします。
(※)ケシ類は一般的に直根性で移植を嫌うものがほとんどなので、直まきして間引きしながら育てます。
・長日処理
今回のそだレポの結果、温暖地での開花には長日処理が有効のようです。冬を越して最高気温15~20℃の時期に、昼が1日14時間以上となるよう電照をあてます(約1ヶ月で開花が始まる)。
=== 以下余談 ===
利尻山のリシリヒナゲシはDNA解析の結果、外見がそっくりの園芸種(欧州で普及しているチシマヒナゲシ[?]の黄花種とされる)に自生地が浸食されてるという研究報告があるそうです。誰かが平地で育つ園芸種のタネを自生地へまいた可能性が高いとか。
(※)北大による研究報告 [PDF] →
http://j.mp/ynDZe4
このそだレポのリシリヒナゲシは、利尻島オタトマリ沼の畔にある土産店で直接自分が買ってきたタネから育てているものなので、利尻島の平地で蔓延っているという“偽物”である疑いは拭えませんが、利尻町立博物館によると、現地の土産店のものは規制前に合法的に採種して繁殖したもののようです。
(※)利尻町立博物館の調査 [PDF] →
http://j.mp/1l0Ly3p
しかし“偽物”のほうが丈夫で耐暑性があって、専門の研究者でもDNA鑑定しない限り“本物”と見分けが付かないほどそっくりなら、趣味家として育てるぶんにはそのほうが歓迎でしょう。そもそもDNA鑑定しないと区別できないものを“別種”としてもいいのかという疑問もわきます。
ともあれ、くれぐれも個人で育てて増やしたタネを利尻山やほかの山へ持ち込んで蒔くようなことはしないようにしましょう。
北海道・利尻島の固有種リシリヒナゲシ(利尻雛芥子)は唯一、日本に自生するケシです。麻薬成分は含まれておらず一般人でも栽培OK。
北海道では春まきの宿根草ですが、本州の温暖・平地での夏越しは困難です。でも普通のヒナゲシと同じく秋まき1年草扱いにすれば、関西でも花を咲かせてタネをとって毎年楽しむ育て方が可能という話を聞いたので挑戦してみました。
狭いベランダでも小鉢で育てられるのが良いですね。