高山植物リシリヒナゲシを温暖な関西で

uesugi
uesugiさん
成功談
植物名 ヒナゲシ
品種名 リシリヒナゲシ(利尻ひなげし)
地域 京都府 場所 ベランダ 栽培形態 鉢植え
日当たり 日なた(半日) 満足度
ジャンル

栽培ストーリー(わたしの育て方レポート)

高山植物リシリヒナゲシを温暖な関西で

高山植物リシリヒナゲシを温暖な関西で

作成日:2013/08/28
最終更新日:2019/04/07

北海道・利尻島の固有種リシリヒナゲシ(利尻雛芥子)は唯一、日本に自生するケシです。麻薬成分は含まれておらず一般人でも栽培OK。

北海道では春まきの宿根草ですが、本州の温暖・平地での夏越しは困難です。でも普通のヒナゲシと同じく秋まき1年草扱いにすれば、関西でも花を咲かせてタネをとって毎年楽しむ育て方が可能という話を聞いたので挑戦してみました。

狭いベランダでも小鉢で育てられるのが良いですね。

  • 9月21日 発芽

    1

  • 10月31日 間引き

    2

  • 11月27日 ロゼット

    3

  • 2月27日 加温で開花

    4

  • 3月22日 種とり

    5

  • 5月3日 咲かない!?

    6

  • 5月16日 蕾

    7

  • 5月31日 開花

    8

  • 6月7日 最終結果

    9

  • 6月18日 再々開花

    10

  • 2019年4月7日

    11

1.9月21日 発芽

高山植物リシリヒナゲシを温暖な関西で 9月21日 発芽
種は2011年4月下旬に利尻島へ行ってオタトマリ沼の畔の売店で購入したものを、冷蔵保存しておき9月12日にまきました。ただし9月の京都はまだ残暑が厳しい為、室内で15~20℃前後を保って発芽させます。

発芽を確認後、すぐに日の当たる戸外へ鉢を移しました。(まだ暑いので午前中のみ直射日光があたり午後は日陰となる場所)

播種から9日後の9月21日には双葉が開きました(写真)。

2.10月31日 間引き

高山植物リシリヒナゲシを温暖な関西で 10月31日 間引き
本葉が見える頃(発芽5日後)に、ピンセットを使って1回目の間引きを行い、約1cm間隔にしました。続いて本葉3~4枚の頃に2回目の間引きを行い、約3cm間隔にしました。

そして10月31日には最終間引きを行い、1鉢に1株としました。本葉10枚程度に育っています。

3.11月27日 ロゼット

高山植物リシリヒナゲシを温暖な関西で 11月27日 ロゼット
本葉20枚くらいに生長しました。

冬に向けて典型的な“ロゼット型”の平べったい草姿になっています。これで寒さや風雪から身を守るわけですね。真上から見ると何かの模様みたい?

4.2月27日 加温で開花 注目!

高山植物リシリヒナゲシを温暖な関西で 2月27日 加温で開花
左… 1月中旬から加温(昼25℃/夜12℃)

右… 無処理(ベランダに置いたまま)

ロゼット状態の株1鉢を試しに室内で加温してみたら約45日で開花しました。花径2.5cm、株張り7cmくらいです。

大株が必ずしも開花の条件ではないことがわかります。

無処理のほうは、休眠状態のロゼット型がキツく(小さく)なって下葉が枯れ込んでいますが、11月に比べると大きくガッチリしているのがわかります。

5.3月22日 種とり

高山植物リシリヒナゲシを温暖な関西で 3月22日 種とり
加温株の開花から24日が経過。最初の花はティッシュで‘こより’を作って人工授粉し、花ガラを摘まずに残しておきました。念のため先に種をとって来季用にします。

ケシ坊主の頭が開いてきたので(画像左)、傾けて紙の上でトントン叩くと、たくさんの種が…(画像右)。

数年前、市販の開花苗を購入したときは種をとっても受精不良による粉みたいなカスばかりで発芽しませんでしたが、今回は充実した種がとれました。

6.5月3日 咲かない!? 注目!

高山植物リシリヒナゲシを温暖な関西で 5月3日 咲かない!?
5月になり大株になっていますが蕾がつきません(画像・上)。加温して2月末に咲かせた株も、あれから蕾なし。

少し調べたところ、ケシの花芽分化は「20℃以下+長日条件」で起こり、25℃以上では分化しないとか。同じケシ科ケシ属の本種でも同様かもしれません。

ここ数日の最高気温は25℃前後。このままでは咲かずに終わりかねない為、冬に咲かせた方の株は、夜間照明で長日条件にしてみます。(同・下)

7.5月16日 蕾

高山植物リシリヒナゲシを温暖な関西で 5月16日 蕾
狙い通り、夜10時頃まで電照をあてた株にのみ、株元の蕾を確認できました(画像)。無処理の鉢のほうには蕾はありません(5月3日以降、気温が25℃を超えた日は計4日)。

やはり涼しいうちに長日条件にならないと花芽分化しないようです。また、約2週間の処理でよいこともわかりました。

冬期の簡易温室で株元に蕾を確認したときはその10日後に開花したので、この蕾が咲くのは今月下旬でしょうか。楽しみです。

8.5月31日 開花 注目!

高山植物リシリヒナゲシを温暖な関西で 5月31日 開花
5月27日から咲き始めました。5月3日より電照している株が画像左です。今日の京都の最高気温は30.4℃…!

冬に試験的に加温したときは2輪しか咲きませんでした。今回は同じ1株で蕾が10個ほどあります。草丈・株張りとも約13cm。

電照なしのほう(右)は、蕾はまだ見あたりません。

一応そちらも咲かないと残念なので5月18日から夜に電照をあてています。暑い夏がくる前に咲くでしょうか。

9.6月7日 最終結果

高山植物リシリヒナゲシを温暖な関西で 6月7日 最終結果
6月になり最高気温28℃ほどの日が続いています。

5月3日から電照したほう(左)は、あれから毎日次々と咲き続け、いよいよ最後の花になりました。

遅れて5月18日から電照したほう(右)は、やっと1輪目が咲き始めました。でも蕾はあと2個しかありません。株はこちらのほうが大きいのに…。

やはり温暖地でリシリヒナゲシを咲かせるには、3月頃から夜の電照で長日にするのがコツかと思われます(要・検証)。

10.6月18日 再々開花

高山植物リシリヒナゲシを温暖な関西で 6月18日 再々開花
終わったと思っていた花がまた咲き出しました。5月上旬から電照したほうの株です。

前回(6月7日)以降は、夜の電照を一切やめています。梅雨入りしてから最高気温が25℃以下の日が4日ほどあって涼しいのと、もうじき夏至で自然に長日条件となっているためでしょうか。

ただし葉の枯れ込みも目立ってきました。夏越しは難しいでしょう。タネもとれたし、あとは残りの蕾が無事咲いて終わることを願います。

11.2019年4月7日 注目!

高山植物リシリヒナゲシを温暖な関西で 2019年4月7日
平成最後の春も無事に(3月の長日処理で)咲かせることができました。5号だ円型ハンギング鉢に4株植えです。

このそだレポ巻頭言では「1年草扱いにすれば関西でも花を咲かせてタネをとって毎年楽しむ育て方が可能」と書きましたが、実際そのようにタネをとって毎年、かれこれ7年間ずっと欠かさず咲かせて楽しむことができています。

小さな鉢で育てられるポピーは可愛いですね。

以上でそだレポ完了とします。

開花期

わたしの育て方

※自生地(利尻山)での花期は7~8月

【栽培環境】
南向きマンション中層階ベランダ。屋根が霜よけになり、秋~春は直射日光が朝8時過ぎから午後3時頃まで当たります。

ベランダには金属の格子を取り付け、そこにリシリヒナゲシのハンギング鉢をかけています。自生地を意識して寒風には吹き晒しで風通し抜群。

ただし後述の種まき時は室内で。また幼苗期と春5月以降は午後の強い西日が当たらない半日陰で管理しました。10月~4月は午後もよく日の当たる場所です。

【水やり】
土の乾き具合と天候を見ながら毎日または1~2日おきに1回、鉢底から水が流れ出るくらいたっぷり、が基本。用土が山野草用の軽石主体で水はけが大変よく乾きやすいので、空気が乾燥しがちな秋冬は『ちょっと多いかな?』と思う程度に水やりしています。

【肥料】
播種時の元肥はなし。本葉が2~3枚の頃から緩効性の粒状化成肥料(「マイガーデン植物全般用」 [N:P:K:Mg = 11:11:7:0.5])を鉢のへりに沿って2~3ヶ月に1回、規定量を置肥。さらに通常より薄い液肥(ハイポネックス微粉の2000倍液)を週に1~2回、水やりがわりに。

【病気と害虫】
今のところ特になし。予防の散布もしていません。

【用土と鉢】
市販の“東洋蘭の土”(軽石主体で“山野草の土”よりも粒がやや大きい)を鉢の八分目まで入れ、さらに同じ土を目の細かいふるいでふるった細粒のほうを表土部分に厚さ1~2cmしいて、そこへタネをまきます(直まきのためタネが流されないように)。鉢はプラスチックの4号鉢または壁掛け用の5号鉢を使用。素焼き鉢やヤシマットタイプだと乾燥しすぎる恐れがあり避けます。

(※)リシリヒナゲシの自生地は、利尻山(標高1,721m)の山頂付近でゴツゴツした岩が多い砂礫地。なので普通の山野草の土よりも荒めにしています。でも現地では山のふもとにあるホテルや民家の庭先にも植えて咲かせているそうです。

【主な作業】
・種まき
1年草扱いで夏越しさせずに花を咲かせるには、秋口に早くタネをまいて冬までに株を大きくしておくことがポイントのようです。しかし9月上旬まきだと関西ではまだ残暑が厳しく連日30℃以上となる時期で、発芽適温ではありません(ケシ類の発芽適温は一般的に15~20℃)。

そこでパンジーやビオラのタネを早まきするときの要領で、室内で保冷剤とクーラーボックスを使って播種から発芽まで15~20℃を保つようにします。ただ手間がかかるため、今回は化粧品用の小型電動クーラーボックス(通販で2~3千円程度)を使用しました。いちおう自動で温度調整してくれます。

タネはバラまきで覆土なし。発芽までの水やりは霧吹きで行います。発芽後はただちに外へ出し、午前中のみ日が当たり午後は日陰となる風通しの良い涼しい半日陰へ移動しました。10月以降はよく日の当たる場所へ。

・間引き
双葉が開いた頃に1cm間隔となるよう間引き。その後、本葉が開いて葉が触れあう程度になるたびに間引いて、最終的に4~5号鉢に1株、7号鉢に3~4株とします。

(※)ケシ類は一般的に直根性で移植を嫌うものがほとんどなので、直まきして間引きしながら育てます。

・長日処理
今回のそだレポの結果、温暖地での開花には長日処理が有効のようです。冬を越して最高気温15~20℃の時期に、昼が1日14時間以上となるよう電照をあてます(約1ヶ月で開花が始まる)。

=== 以下余談 ===

利尻山のリシリヒナゲシはDNA解析の結果、外見がそっくりの園芸種(欧州で普及しているチシマヒナゲシ[?]の黄花種とされる)に自生地が浸食されてるという研究報告があるそうです。誰かが平地で育つ園芸種のタネを自生地へまいた可能性が高いとか。
(※)北大による研究報告 [PDF] → http://j.mp/ynDZe4

このそだレポのリシリヒナゲシは、利尻島オタトマリ沼の畔にある土産店で直接自分が買ってきたタネから育てているものなので、利尻島の平地で蔓延っているという“偽物”である疑いは拭えませんが、利尻町立博物館によると、現地の土産店のものは規制前に合法的に採種して繁殖したもののようです。
(※)利尻町立博物館の調査 [PDF] → http://j.mp/1l0Ly3p

しかし“偽物”のほうが丈夫で耐暑性があって、専門の研究者でもDNA鑑定しない限り“本物”と見分けが付かないほどそっくりなら、趣味家として育てるぶんにはそのほうが歓迎でしょう。そもそもDNA鑑定しないと区別できないものを“別種”としてもいいのかという疑問もわきます。

ともあれ、くれぐれも個人で育てて増やしたタネを利尻山やほかの山へ持ち込んで蒔くようなことはしないようにしましょう。
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