ご存じ、埼玉県日高市・巾着田(きんちゃくだ)のヒガンバナです。高麗川の岸辺に長さ600メートル、幅50メートルほどの規模で群生し、ちょうど今、見頃を迎えています。この季節を物語るシーンとして皆さんにお知らせしたいと思い、カメラに収めてきました。
お彼岸になると、不思議なもので、季節の入れ替わりを実感します(東京基準で申し訳ありません)。「暑さ寒さも彼岸まで」といわれますが、あれほど暑かった夏が遠くに感じられるほどです。そして秋のお彼岸にまるでタイマーを合わせたかのように、ヒガンバナが咲き出します。
家庭園芸では、ヒガンバナ(リコリス Lycoris/彼岸花、曼珠沙華)は夏植え秋咲き球根として扱われます。夏に植えた球根は秋になるといきなり芽が出て、あっという間に花が咲きます。やがて花が終わると葉が繁り、翌年の梅雨に入る頃、葉が枯れて休眠します。
かつてヒガンバナについて専門家に話を聞いたことがありました。そのとき、この植物のことを「葉見ず花見ず(はみず・はなみず)」と呼んでいたことが印象的でした。「花が咲くときは葉がなく、葉が繁るときには花がない」ヒガンバナのライフサイクルから来ているのだそうです。植物と常に向き合っている園芸家ならではの面白い表現だと、そのとき思いました。
巾着田500万本の曼珠沙華が織り成す赤い絨毯。パソコンのデスクトップ画面に貼り付けて、当分、秋の気分に浸ろうと思います。
http://www.kinchakuda.com/
(元『趣味の園芸』編集長 原田)
--------------------------------------------------------------
<9月24日メールマガジンにて配信>
【元編集長のひとりごと】は、メールマガジンとFacebookページに掲載中の、『趣味の園芸』テキスト元編集長 原田による園芸エッセイです。
※コメントの書き込みには会員登録が必要です。