春の植えつけ、ちょっと待った! おすすめの方法を宿根草のプロが解説
自然な雰囲気の庭づくりに欠かせない「宿根草」。適材適所に用いれば、植えっぱなしで元気な姿を楽しめます。植えつけのポイントを、『NHK趣味の園芸 おぎはら流 がんばらなくても幸せな庭 宿根草のナチュラルガーデン』(著・荻原範雄)から紹介します。
宿根草は秋がおすすめ
真夏や真冬を避けた穏やかな季節なら、宿根草はいつでも植えつけできます。一番のおすすめは秋。これから育つ場所で冬の寒さを経験することが今後の株の成長を左右します。
宿根草は基本的に冬に休眠して生育を一度リセットし、春の芽吹きとともに成長を始めます。そうすることでその場所での適応力がつき、枯れにくい丈夫な株に育ちます。春の植えつけではその場になじまないうちに苦手な梅雨や夏を迎えることになり、その年は十分なパフォーマンスが期待できないことも。
特に暖地では無事に夏越しさせるためにも秋植えがおすすめ。冬のうちから少しずつ根が張ることで株が充実し、夏の暑さに耐えられます。秋のなかでも朝晩10℃前後になる11月ごろが理想。ただ多くの苗は10月ごろに出回るので、入手したら早めに植えつけてもかまいません。
北海道や寒冷地では9〜10月に植えつけを。霜が降りるまでには根を張らせたいので少し早めです。夏も涼しい地域では春から夏に植えても問題はありませんが、その場所で冬越ししたほうが本来の姿を楽しめます。
日なたで風通しのよいところ
宿根草は一度苗を植えつけたらほったらかしでも花を咲かせてくれます。でも、毎年花を楽しむには植えつける場所が重要です。
多くの宿根草は日なたを好みます。ただ全般的には寒さに強く、暑さを嫌うタイプが多いので、夏を涼しく過ごさせることが育てるときの一番のポイントになります。
そのためには西日を避けて、風通しのよいところに植えつけましょう。風通しが悪いと、特に長雨や暑い時期は株が蒸れて傷む原因になります。生い茂る雑草を取ったり庭木の剪定をしたりして、風通しのよい環境を整える工夫も大切です。
水はけよくやせ気味の土を好む
植えられた場所で長い年月をかけて育つ宿根草は、土質が合わないといずれ育たなくなります。多くの宿根草が好むのは水はけがよく、やせ気味の土です。
強くやせて何も育たない場合は、肥料や堆肥を入れる、逆に肥沃すぎる場合は培養土を入れたり軽石をすき込んだりしてコントロールします。どちらも半月ほど過ぎて、土壌が落ち着いてから植えつけると確実です。
宿根草を育てるようになると自分の庭土の性質が徐々にわかってきます。肥沃すぎる場合は、肥沃な環境を好む宿根草もあるので、広範囲に土壌改良するよりもその場に合うものを植えるほうが手間なく育ちます。
肥料は基本的に必要としない
肥料をたくさん施せば、たくさん花を咲かせ丈夫に育つと思われがちです。でも多くの宿根草は、植えつけるときに肥料や堆肥などを施す必要はありません。
肥料は一時的に成長を促進させるものなので、時間をかけて育つ宿根草に施しても生育サイクルが一時的に早くなってしまい、かえって逆効果。軟弱な株になってしまうこともあります。バラや一年草などに肥料を施すときには宿根草に影響しないように気をつけましょう。
また、成長の途中に施す肥料、いわゆる追肥も基本的に必要ありません。肥料を施さなければ育たないのは、その場所や土質が合っていないことになります。その場合は植えつけ場所を検討したほうがよいでしょう。
ただし限られたスペースで育つ鉢植えや小さな花壇の場合、肥料は欠かせません。時間とともに失われる養分を肥料で補います。ゆっくりと長く効く有機肥料や化成肥料を使いましょう。
培養土は水はけがよければ一般的な園芸用培養土でOK。(撮影/田中雅也)
*本記事は荻原範雄『NHK趣味の園芸 おぎはら流 がんばらなくても幸せな庭 宿根草のナチュラルガーデン』(NHK出版)を抜粋・再編集したものです。
NHK趣味の園芸 おぎはら流 がんばらなくても幸せな庭 宿根草のナチュラルガーデン
国内外で注目を集めるローメンテナンスな庭「ナチュラルガーデン」。宿根草のスペシャリスト・荻原範雄さん(「おぎはら植物園」店長)がナチュラルガーデン向きのいま育てたい宿根草ほか346種の植物と、日陰・酷暑・狭いなど植え場所の悩みに応じた植物選びをレクチャー。
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負担を減らしたシンプルな栽培法、豊富な庭の写真も必見。[著者]荻原範雄