果樹栽培の達人・神保賢一路さんに聞く、果樹が育てやすくなる仕立て方。〈どうする? 高く伸びすぎた木〉【趣味の園芸11月号こぼれ話・前編】
『趣味の園芸』2023年11月号の特集内「神保流 THE 剪定」では、剪定で果樹をコンパクトに育てながら実をたくさんつけるための極意を、神保賢一路さんに教えていただきました。100坪のガーデンで40種近くの果樹や野菜を育てる神保さんは、幼少期から果樹に囲まれて過ごしたそう。そんな長年の経験をもとに、果樹が育てやすくなる仕立て方について、誌面で紹介しきれなかったお話をさらに伺いました。
前半は、大きく育ちすぎた果樹について。みなさんの庭にもおこまりの木があったら、ぜひ参考にしてください。
どうする? 高く伸びすぎた木
神保賢一路(以下、神):みなさん、大きい木をありがたがって、切らずに大切にされていると思うのですが。じつは木の成長にとって、大きいことはよいこととはかぎらないのです。
編集部(以下、編): 大きければ大きいほど、立派ですごいと思っていました!
神:実際に日本の古くからの里山では、8~15年に1回ほどのサイクルで木を伐採して、薪や建材として生活に利用してきました。そうやって更新することで、木が健康に育ち、倒木などの危険も減らすことができます。
神保邸の果樹。適切な剪定で、大きくなりすぎないよう管理されている。(撮影/田中雅也)
編:人が適切なタイミングで手を入れることも大事なのですね。
神:果樹でいえば、大きいとそれだけで庭の場所をとり管理が大変になりますし。収穫するのも大変になりますよね。
編:たしかに。簡単には手の届かないようなところになっているウメやカキをよく見かけます。
日本各地で栽培されているカキ。成長すると、高さ5メートルほどになることも。(撮影/桜野良充)
神:テキスト「11月号」でご紹介した剪定法で、ほどよい高さをキープし続けるのが理想ですが。もし、もう大きく育ちすぎてしまっていたら、3月に一度、ばっさりと切ることをおすすめします。
編:ばっさりと切ってしまっていいのでしょうか。
神:はい、後編で、詳しく解説しますが。株元から10~30cmの高さで幹を切ることを「台切り」、株元から80~200cmの高さで幹を切ることを「台場切り」といいます。ちなみにこの、「台場切り」を繰り返して幹が太くなったクヌギは台場クヌギと呼ばれていて、オオクワガタなどのかっこうの生息地になるんです。
*接木している木を「台場切り」する場合、接木している台木より高い位置で切るよう気をつけましょう。台木より低い位置で切ると、台木となっている木の若芽が伸びてしまいます。
編:なるほど。「台切り」と「台場切り」は、どんな木でも行うことができるのでしょうか?
神:すべての木に合う手法というわけではありませんが、果樹でいえば、今回紹介したカキ、イチジク、ビワ、それからクリやキンカンにも可能です。
家庭栽培で人気の果樹、イチジクやキンカン。(撮影/丸山 光、蛭田有一)
▼後編はこちら!「台切り」「台場切り」の実践法を紹介します。
神保賢一路(じんぼ・けんいちろう)
緑地環境プロデューサー/横浜市環境創造局で30年間にわたり、生きものと共存する公園づくりや生態調査を行う。現在は「かのこ環境大学」で人も植物も動物も心地よい循環型の暮らしを実践するさまざまな「技」を伝えている。
(撮影/桜野良充)
『趣味の園芸』2023年11月号
レモン、オリーブ、ミニリンゴ...自宅で実のなる果樹を楽しんでみませんか? 食べ終わった果実のタネから始める果物栽培、新常識の果樹剪定。思わずやってみたくなる、そんな企画も詰め込みました。注目特集はパンジー&ビオラ!この秋おすすめの30品種をピックアップしました。稲垣吾郎さんの「グリーンサム」第8回のテーマはヘルシー植物。
「~小さく育てて、実りたわわに~ 神保流 THE 剪定」では、健康的にコンパクトに果樹を育て、豊富な実りを得る剪定の極意を紹介。『趣味の園芸』11月号でお読みいただけます。
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『趣味の園芸』編集部によるテキストこぼれ話。最新号の特集や記事に関連して、誌面で紹介しきれなかった情報をお届けします。【毎月2回公開予定】